(NPO)氷河・雪氷圏環境研究舎

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zoom RSS 『ニュージーランドの旅』 (1)〜(9)

<<   作成日時 : 2015/11/26 15:00   >>

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[Photo: マウント・クック。雪と氷で被われた鋭いピークの右が主峰(3724 m)、左が副峰(3593 m)、その左下の円いピークはヒックス山(Mount Hicks, 3216 m);11月16日、クック・ビレッジから]

{本稿は、NPO法人氷河・雪氷圏環境研究舎ウェブサイトのBBS「情報の広場」にて、2015年11月26日から12月30日にかけて『ニュージーランド(NZ)の旅』(1)〜(18)として連載した記事に、新たに写真30数景を増補したものである}


(1) 序
                投稿日:2015/11/26、No.206

 訪れたことがない国の中で、いつか機会があったら行きたい(行こう)と思っていた地域ニュージーランド(New Zealand: NZ)へ、11月13日から25日まで旅行した。旅の主要なコンセプトは、いつもと大きくは変わらず自然探勝である。

 NZは南北2つの島からなり、北島(North Island)の北端(岬)は南緯34°25’で緯度からみると日本の広島-淡路島-伊勢に相当し、南島(South Island)の南端は南緯46°41’で樺太南部のユジノサハリンスク付近となる。
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(Map: Reproduced from backtonaturetours)

 諸島を含めたNZの総面積は27万平方kmで日本のほぼ3/4、人口は424万人(2013年)で日本の約1/30、したがって人口密度は日本の1/20程度となる。

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 13日夕成田を発ち、NZの最大都市オークランド(Auckland)で乗り継ぎ、翌日の昼、南島の中心都市クライストチャーチ(Christchurch:CC)へ着いた。北海道の初夏ころを想定していたのだが、軽い防寒ジャケットかウィンドブレーカーをはおるほどの肌寒さ、しかし様々な花が咲き誇る春だった。
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    [写真] (上)クライストチャーチ市内の観光用路面電車の発着駅.
         (下)ハグレー(Hagley)公園内の植物園(11月15日).


(2) 2011年震災
                投稿日:2015/11/28、No.207

 クライストチャーチ(CC)では、何はともあれ、まず2011年地震に触れなくてはならない。CC市の中心部を訪れた人は誰でも、市街の半分以上の場所で全壊や半懐のビルディング(写真)、あるいは瓦礫のさら地を目にするからである。
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 2011年2月22日正午過ぎ、CC市に大きな地震が発生し、死者185人に及び、中でも語学留学生たちの英語教室があったビルディング(CTV)が崩壊し、日本人28人が犠牲となる大惨事となった。

 当初は日本のメディアでも連日大きく報道されていたが、17日後に3.11東日本大震災が発生したため、CC震災はニュース源としては完璧に抹消されたようだ。

 2.22地震は、マグニチュード6.1で特に大きな地震ではなかったが、震源がCC市近郊の海岸近く、さらに深さ6 kmと浅かったため、市街中心部から海岸地帯にかけて大きな被害が発生した。もともとその地域は地盤が悪く、地震により液状化現象が起こったため、大きなビルの倒壊をも引き起こすことになった。
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 この写真は、市の中心部にあるシンボル的存在の観光名所カセドラル(Cathedral, 大聖堂:1904年完成)であり、高さ63 mの尖塔が倒壊、屋根や壁の一部が崩壊している。

 地震後3年間、この大聖堂を修繕・補強・復元すべきとの意見と、解体し将来新たに再建するとの意見が対立し、折り合いがつかず、裁判の結果、判決(2014年2月)は「解体」となったそうである。

 
(3) 南アルプス
                投稿日:2015/11/30、No.208

 南島の脊梁を北から南へ500 kmにわたって南アルプス(Southern Alps)が走っている。日本でも、赤石山脈を愛称的に南アルプスとも言うし、南アルプス国立公園や山梨県南アルプス市の公式名がある。

 一方、NZ(ニュージーランド)の南アルプスは、ヨーロッパの本場アルプスに対して、「南の」あるいは「南半球の」の意味でそう呼んでいる。実際、山脈の長さ、高さはヨーロッパ・アルプスより一回りか二回り小さいが、氷河で浸食された鋭峰、急峻な岸壁や氷壁など、アルプスの弟分と言える。

 南アルプスには標高3000 mを超える山が17峰ある(注:書物やサイトにより、19や23峰の記述が見られる。その理由は、一つは同一山系のサブピークを独立と見なすかどうか、一つは最近山の標高の公式値が変更されたこと、などにあろう)。

 空中写真と人工衛星ランドサットの解析により、南アルプスには1980年代、面積0.01平方km(=1 ha)以上の氷河が3155個存在することが分かった(Chinn, T., USGS)。これらの氷河の多くは、世界の山岳氷河の傾向と同様に、現在後退(縮小)しつつある。

 南アルプスの山々と氷河を見ようと、16日、路線バスにてマウント・クック国立公園に向かった。この地域へ行くためには、自動車か貸し切りバスを除くと、この1日1本の定時乗り合いバスしかない。休憩を含んで片道5時間半かかるが、客の全員は観光旅行者で、バスの運転手や車掌が走行中おりに触れて観光ガイドをする。

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 休憩スポットのテカポ(Tekapo)湖から見た南アルプスの写真を示す。山の上部は、氷河に加え前日-前々日に降った春の新雪に被われている。

 テカポ湖は、かつて氷河が存在した窪地に氷河の融け水等を貯えている氷河湖である。湖岸に咲く花はルピナスである(写真)。
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(4) マウント・クック
                投稿日:2015/12/02、No.209

 バスは朝07:30にCCを出発し、330 km走って13:00過ぎ、アオラキ/マウント・クック(Aoraki/Mount Cook)という名の山間のリゾート村へ着いた(写真:ホテルのテラスより)。
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 アオラキとは、マオリ語で「雲を突き抜ける山」の意味である。各種の本や地図では、AorakiとMount Cookの間に“/”を入れ、並列するように記載されている。
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 その山が、写真(*)のアオラキ/マウント・クックである。雪と氷で被われた鋭いピークは同山の副峰(3593 m)で、主峰はその奥に見えている。(* 16日20:30頃、クック村のホテルから撮影。サマータイムを採用しているので、実質の地方時は19:30頃。)

 NZの最高峰マウント・クックの標高は従来3764 mだったが、1991年に山頂付近で大規模な岩石崩壊が起こり、高さが10 m低くなり、3754 mが公式な標高として書物、観光パンフレット、ネットに紹介されている。

 ところが、NZオタゴ(Otago)大学の研究者(講師と大学院生)のパーティーが2人の山岳ガイドとともに、昨(2014)年11月、マウント・クックを登頂し、頂上の氷の上で精密GPS測量を行い、最新の空中写真の解析と合わせ、標高が30 m低い3724 mと発表した。その標高低下の原因は、20余年間の氷と岩の崩壊、および氷の浸食のため、と同研究者等は考えている(Fairfax NZ Limited・他を参照)。

 この3724 mが公式標高として認定されているのかどうか調べてみたが明確には判明しなかった。しかし、クック村へ来るバスの運転手やガイドは、繰り返し「3724 mが正しい高さだ」と言っていた。WikipediAでは新標高が採用されているが、3754 mのままとしているサイトや印刷物も多い。

 いずれにしろ、山頂が氷や雪の場合は、数年で高さが数m変動しても、特に不可思議な現象とは言えない。


(5) クック・ビレッジ
                投稿日:2015/12/04、No.210

 クック・ビレッジ(写真)の背景は、フットストゥール山(Mt. Footstool, 2764 m)と、その南東斜面の懸垂氷河とアイスフォールであり、谷底のミューラー(Mueller)氷河に氷なだれ等により雪と氷を供給している。
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 アオラキ/マウント・クック・ビレッジ(村)には、宿泊料から見ると5星クラスの大型ホテル1軒、4〜3星クラスのロッジやモーテル3、4軒(写真)に加えて、コテージ(ここでは、chaletという)、ユースホステル、バックパッカー宿などがあり、トレッカー、登山者、観光客、保養客、動植物観賞者、サイクリスト、(冬季は)スキーヤー、ボーダーなどの拠点となっている。

 散歩がてら、標高700-760 mに点在する宿泊施設群を一周したら数十分を要した。その下(しも)には、諸施設や観光業で働く人たちの宿舎や団地がある。
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 クック村には、上記の他にレストラン2店と自然保護局(DOC)のビジターセンター(写真)があるが、キオスクやコンビニのような飲み物や軽食を買うことができるショップが全くない。これだけ大勢の旅行客が滞在しているので、商売が成り立たないはずはなく、たぶん何らかの規制や方針でそうなっているのだろうと思う。

 ビールやワインを飲みたければレストランやホテルのバーへ、ランチボックスが所望ならレストランへ注文するか、カフェでサンドウィッチを買って持ち帰りにする。

 観光案内書やパンフレット等によると、マウント・クック国立公園内の氷河観光のビッグ3は、山や氷河の上の遊覧飛行、ヘリコプターで氷河上に着陸しガイドに連れられて少し歩くこと、およびNZ最大のタズマン(Tasman)氷河末端の湖内を氷山や氷片を避けながらボートによるクルージングである。
 
 私は、この3つは今さらもういい、という感じで、参加する気は毛頭ない。ひたすら、地上を歩くのが良い。クック村2泊3日の滞在中、半日と1日で、2つのコースをトレッキングした。


(6) ミューラー氷河
                投稿日:2015/12/06、No.211

 16日夕方近く、いくつかあるトレッキングコースの内最も平易な一つを選び、ミューラー氷河末端へ向けて出発した。林内、草原、河原に整備された遊歩道を進み、アップダウンは少なく、最後にエンドモレーン(終堆石提)の丘の裾を少し登ると、ケアポイント(Kea Point:写真)と名付けられている展望地点に到着した(片道40分)。
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 そこはミューラー氷河末端の湖の右岸で、氷河は後退し、ここからは見えない(写真下の左枠外)。正面の氷を頂いた鋭鋒はマウント・クック副峰(3593 m)である。
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 湖の向こう岸を左右に工事現場のような土砂の提があり、一見興ざめの様でもある。しかしこの土手は、かつてミューラー氷河が湖の位置にあった頃、氷河がブルドーザーの如く岩盤を削り、その岩屑を両岸に積み上げてできたラテラルモレーン(側堆石提)である。すなわち、これも自然の造形である。

 堤に植生が付いていないので、かなり最近形成されたモレーン、つまり氷河が後退してからそんなに多くの年月を経ていないことがうかがえる。

 湖の中央に見える黒っぽい「島」はモレーンだと思ったが、ケアポイントにある解説版に、この「島」は氷河氷(glacier ice)と表示されていた。そうすると、ミューラー氷河の末端はこの辺り、湖の中央付近にあることになる。

 湖水の色は、薄い青みを帯びた乳白色を呈しているが、氷河が削った微細な岩石の粉が浮遊しているためで、俗にグレーシャーミルク(glacier milk: 氷河乳)と言う。


(7) フッカー氷河
                投稿日:2015/12/08、No.212

 翌17日は、同じくポピュラールートながらやや長いフッカー(Hooker)谷コースをたどり、フッカー氷河末端の湖まで行くことにした。往路は谷に沿って草原、花畑、ガレ場の緩い傾斜のトレールを上る。写真の中央の尾根の間がフッカー谷、奥の山がマウント・クック副峰である。

 前夜(16日)マウント・クック頂上に笠雲(レンズ雲)が懸かっていたので(4参照)、天気は下り坂と思っていたが、その通り、今日は山の上部は雲の中、ときどき小雨、さらに間欠的に山越えの突風が吹き下ろす天候であった。
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 途中、吊り橋を3か所渡る(写真)。3つとも頑丈そうな吊り橋で、不安感はない。
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 マウント・クック国立公園のウェブサイトには、この山塊の氷壁の上に架かる吊り橋をトレッカー達が歩いている写真が載っている。天気が悪かったばかりではなく、素人にはそれに似た迫力ある写真は撮れない。おそらく、トレール外の特別なポイントから超望遠レンズで見た構図なのだろう。

 クック村を出発してから2時間余りで、フッカー湖の下流端に着いた。トレールはここまでである。湖の上流端に、表面がデブリ(岩屑)に被われた黒いフッカー氷河の末端が見える(写真)。湖には、氷河から崩れた小さな氷塊が2、3個漂っていた。
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 ここから氷河方向へは立ち入り禁止、というような標識はないが、フッカー湖の両岸はかなり急なガレ場で、ふつうの人はそこをトラバースしようとは思わない。もしフッカー氷河の調査をしようとするなら、ヘリコプター利用か、ゴムボートを持参して湖を渡るのが妥当である。

 往復4時間余りの行程で、様々な言語を話す大勢のトレッカーと行き交った。目的地に急ぐ人たちの他、自然ガイドとともにときどき立ち止まり花など植物を観察する少人数のグループもいくつか見かけた。
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     マウントクック・バターカップ(buttercup)


(8) ニュージーランドの氷河
                投稿日:2015/12/10、No.213

 NZの氷河で長さによるランキングでは、タズマン氷河(29 km)、ムーチソン(Murchison)氷河(18 km)に次ぐ第3位クラス(14〜10 km)にミューラー氷河、フッカー氷河、フォックス(Fox)氷河、フランツジョセフ(Franz Josef)氷河が続く。これらは全て、マウント・クック周辺に存在する。

 この内マウント・クックの北側のフランツジョセフ氷河では、1980年頃から氷河の計測が行われており、1985-2010年の25年間に氷河の長さは200 m短くなり、面積は11%減少した(WGMS, 2012)。
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 タズマン氷河は、クック村から自動車道(写真)を9 km、そこから小1時間歩くと末端付近を望むことができる。車のない個人の旅行客は、そこへ行くためには何らかのツアーに参加するか、ガイド付きにするか、誰かに送迎を頼むしか方法がない。
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18日午前は、素晴らしい好天になったが、遠出をやめてDOCビジターセンター内外をゆっくり見学した。写真(上)は同センターから見た山々(18日午前)である。左はセフトン山(Mt. Sefton、3151m)、右はフットストゥール山、その間の懸垂氷河はハドルストン(Huddleston)氷河である。写真(下)はセフトン山の懸垂氷河。
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 18日午後、往路と同じバスでクライストチャーチへ戻った。その3日後の21日、マウント・クックの反対(北西)側のフォックス氷河にて遊覧飛行中のヘリコプターがクレバス帯に墜落し、イギリス人4名、オーストラリア人2名の観光旅行者とパイロット1名が死亡する事故を、TVのニュースで知った。

 当時、現地は、全域雲、時おり雨のひどい”terrible”天気だったので、なぜ遊覧飛行を行ったのか、疑問の声が上がっている(The Telegraphより)。NZの主要な観光地でこのような事故は、観光業関係者にとって大きな打撃であろう。


(9) 自然エネルギー
                投稿日:2015/12/12、No.214

 クック村からの帰途、バスはプカキ(Pukaki)湖畔を通過する(写真:湖の向こうにマウント・クックが見える)。この大きな湖(179平方km)も、かつての氷河の跡で氷河湖である。
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 標高700 mのテカポ湖(連載3の写真)から地下のトンネルと運河を経て、このプカキ湖(標高525 m)へ水が送られ、その高度差を利用して水力発電が行われている。さらにこの地域ではオハウ(Ohau)湖を含めた3つの氷河湖と、2つの人造湖や貯水池、運河(写真<下>)などに水力発電所が合計数か所設置されている。
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 NZは偏西風帯に位置し、北島の西にはオーストラリア大陸があるが、南島の西は海洋が広がり、南アルプスの西側海岸と山脈上には多量の雪と雨をもたらしている。例えば、西海岸のミルフォードサウンド(Milford Sound)では平均年間降水量は6715 mm、クック村では4491 mmとなっている(NIWA Data)。

 この豊富な降水と地形の落差のため、南島では水力発電が盛んである。驚くことに、NZの総発電量に占める水力の割合は53%、これに風力と地熱を含めた自然エネルギー(再生可能エネルギー)の割合は73%に達する(2012年)。石炭、ガスの火力発電は27%に過ぎない(新エネルギー財団資料より)。そして、原子力発電は一切導入していない。

 日本はと言うと、自然エネルギー12%、火力発電88%で(2014年)、大変な違いである。NZは理想の形に近い。広大な未利用な土地がたくさんあり、かつ電力需要が少ないために可能となっているのだが、日本もそれに近づけるべく、太陽光、風力、地熱、小水力など努力する余地は十分ある。


                          (つづく)





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