グリーンランド巨大氷島;北極資源;氷河の数;氷床雪面模様

グリーンランドから巨大氷島が誕生 2010/08/09(Mon)、No.2068
 米デラウェア大学海洋物理・工学専攻のムエンチョフ(Muenchow)准教授が、2010年8月5日早朝、マンハッタン島の4倍の大きさの“氷島” (*1)が、北グリーンランドのピーターマン(Petermann)氷河から誕生した、と発表した。
 北緯81度、西経61度、北極点の南約1,000 km地域の人工衛星イメージによると、同氷河の長さ70 kmの浮氷(棚氷)の4分の一が崩落、分離した。この新しい氷島の面積は約250平方km以上 (*2)で、氷の厚さはエンパイアステートビルの半分に達する(*3)。
 この氷島はナレス海峡(*4)に入ると海流に乗って南へ向かい、その途中で、島に定着したり、水路を塞いだり、あるいは小さな多数の氷塊に分裂することも考えられる。そこから、バフィン島とラブラドルの沖合いに沿って南下し、2年以内に大西洋に達する可能性が高い(*5)。
 このような巨大氷島の誕生は、1962年にワードハント棚氷(エルズミア島)から面積約600平方kmの氷が流出した以来の出来事である。その時は、ナレス海峡内諸島の間が多数の氷塊で埋めつくされたのであった。
[以上、デラウェア大学(University of Delaware)ウェブサイトのUDialy記事(Aug. 6, 2010)の抜粋。訳、成瀬廉二]

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(*1)氷島(ice island):テーブル型氷山(tabular iceberg)と同義。北極では、氷山ではなく氷島の語を使うこともある。
(*2)南極デービス基地沖の南大洋をニュージーランド方向へ漂流していた巨大氷山B17B(本欄No.1977)の面積は140平方km(2009年12月7日)、観測史上最大の氷山は、2000年3月にロス棚氷から分離したB15の11,000平方kmである。なお、ニューヨーク・マンハッタン島の面積は60平方km。東京の山手線内側が65平方km、琵琶湖が670平方kmである。
(*3)エンパイアステートビルディングの全高は443 m。したがって氷厚は200-250m程度ということになる。デラウェアはニューヨークに近いので、このような喩えを使うのであろう。
(*4)ナレス海峡(Nares Strait):エルズミア島とグリーンランドを隔てる海峡。
(*5)1912年4月、豪華客船タイタニックが氷山に衝突し約1520人が遭難した地点は、北大西洋ニューファンドランド沖(N41度46分)である。しかし、もし仮にこの付近まで氷島が漂流してきたとしても、現代は人工衛星にて監視しているし、船舶のレーダでも確実に捉えることが出来るので、このような大事故は起こり難いだろう。

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[写真:グリーンランド氷床(写真奥)から海岸に向かって流出する氷河.本記事とは別の氷河.このような氷河の先端が海に浮くと棚氷となり、それが割れて漂流すると氷山(氷島)となる.撮影:亀田貴雄(1989.7)]

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サージ活動中のコンフォートレスブリーン氷河
(北極 Svalbard, May 2008: Courtesy of Monica Sund)

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南極よりも北極で資源の争奪戦 

横川和夫、2010/08/17、No.2071

=国境の共同管理という新しい発想を= 

 連載「新しい南極」(1975年新年連載ルポルタージュ)を書いてから35年という年月が経過した現在、実は石油、鉱物資源問題で、風雲急を告げているのが南極よりも北極である。
 「巨大氷山、南下中」という見出しで、8月初旬にグリーンランド北西部の氷河から巨大な氷山が分離し、分裂を続けながらカナダ沿岸を南下し、1、2年間漂流を続ける可能性がある、という記事が2010年8月12日の新聞に載っていた。面積は約250平方キロメートルで、場合によっては航行する船や石油掘削施設に衝突し、豪華客船タイタニック号沈没事故のような大惨事を起こす可能性もあるという。
 地球の温暖化で北極海の海氷域は想像を超えるスピードで減少しており、2037年の夏季には氷のない北極海が出現するといわれてきた。しかし最近ではスピードが早まり2013年にも氷が消えるという予測もあり、それを裏付けるような記事なのでギョッとさせられた。

○北極海で資源争奪戦 夏季に北極海の氷がなくなると、どうなるか。
 海洋政策研究財団の北極海季報によると、北極圏には未開発だが、技術的に採掘可能な世界の資源の約22パーセントが埋蔵されている。
 そのため氷が消えて船による航行が可能になると、北極海の氷の下に眠っている石油、天然ガス、さらには金、銀、銅、白金などの鉱物資源をめぐっての争奪戦が各国間で展開されるだけでなく、新しい北極航路が開かれることにより、軍事面や商業面にも大きな変化が現れてくることが予想されている。南極よりも北極海域をめぐる資源争奪戦が身近な問題として迫ってきているのだ。

○ロシアが北極点海底に国旗
 その前哨戦ともいうべき動きが早くも始まっているという。 例えばロシアは2007年8月に、深海潜水艇2隻で北極点の海底にチタニウム製のロシア国旗を立てた。北極海の資源に対する主権的権利の既成事実をつくろうというわけだが、カナダや北極海沿岸諸国は「今は15世紀ではない」と、ロシアを厳しく批判したという。このほかロシアは北極海での海空軍活動を活発化させている。
 このロシアの動きに対応するかのようにアメリカ、カナダ、ノルウェー、デンマークなども警戒感を示し、それぞれが北極圏で軍事活動を活発化させているのが現実である。

○中国も北極海に多大の関心
 北極海域の資源をめぐる争奪戦は、これからさらにエスカレートしていくに違いない。これまで静観していた中国も最近、北極海域に強い関心を示し、1993年には極地調査用の砕氷船を購入し2010年には4回目の調査活動を行う予定だ。
 中国にとって北極海航路が開けると、上海―ハンブルグの航路はスエズ運河、マラッカ海峡経由より6400キロも短縮できるだけでなく、海賊事件により10倍に跳ね上がっている保険料の節約にもなる。
 いずれにせよ北極海域での資源開発は一国だけでは不可能で、北極海資源の多くに主権的権利を有するロシアは採掘技術が低く、資金も不足している。そのため資金を提供できる中国、技術を提供できる西欧やブラジルによる共同開発が考えられるというのが秋元一峰氏(海洋政策研究財団主任研究員)の見方だ。

○国境を共同管理し新しい文化圏を
 石油や鉱物資源をめぐる争奪戦に対して日本はどう対処したらよいのだろうか。この問題についても太田昌秀さん(元ノルウェー国立極地研究所)は「従来の国境という概念にとらわれずに共同管理しながら新しい文化圏を築くという発想の転換が必要ではないだろうか」とユニークな問題提起をしている。私も同感である。

[この記事は、第10次南極観測隊ウェブサイトに16回にわたって連載した復刻版「新しい南極」+追想の16回目を圧縮、編集したものである。筆者:元共同通信社記者、第10次南極観測夏隊(68-69)同行取材]


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(写真:北極海へ流出するスバールバル諸島・アウストフォンナ氷河の末端.The front of Austfonna Glacier in Svalbard, calving into the Arctic Ocean, in August 2005. Courtesy of Bernard Lefauconnier, Jon Ove Hagen & R. Naruse)

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地球上の氷河の数は20万個!? 

成瀬廉二 、2010/09/05、No.2078

 世界中の氷河研究者の多数が登録しているメーリングリストに、前NASA所属の氷河研究者ビンドシャドラー(Robert Bindschadler)が、「世界中の氷河の総数について引用したいのだが、信頼できる数字は幾つか?」という問いかけを発した(8月下旬)。これに対する応答の一部は概ね以下の通りであった。
 ジスクート(Hester Jiskoot、カナダ)「私は今まで16万個(Bahr他、1999)という数を使ってきたが、各地域で公表された氷河の数を計算しなおし、外挿による推定を加えた結果、南極半島の氷河や岩石氷河をも含め157,122個となった。これは偶然に、16万個に近い。さらに、1 km^2(平方キロメートル)より小さい氷河を除くと、16万個の約半分となった」
 プフェファー(Tad Pfeffer、アメリカ)「今まで報告された最大の数字は、1 km^2以上の氷河で20万から40万個である。別の研究者は、カウントされていない氷河もたくさんあるので、実際の総氷河数は約20万個以上としている」
 ビンドシャドラーは、Atsumu Ohmura(スイス)の論文をも参考にして、とりあえずの結論として、20万個以上とした。
 氷河の数を調べて何か意味があるのか、と思われる方も多いかもしれない。確かにあまり強い意義はないかもしれないが、数は最も初級の統計量なので、価値がないわけではない。しかしながら、例えば砂利道に敷き詰められた砂礫の数を数えたとすると、小さい砂粒まで含めると限りなく多数になってしまう。だから、0.1 km^2以上とか、1 km^2以上とか、基準を定めることが望ましいが、世界の各地域では、研究者がそれぞれの目的をもって氷河の高度、長さ、面積、体積等を調べ、集計しているので、統一的な基準はないのが現状である。
 IAHS/UNEP/UNESCOの氷河台帳には、1 km^2以下の氷河も多数掲載されている。また、日本の”万年雪”(多年性雪渓)の大雪山「雪壁雪渓」や剣沢「はまぐり雪」の9月末の面積は数千平方m程度なので、0.005 km^2のオーダーである。

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 写真は、アルゼンチンのフィッツ・ロイ(Fitz Roy, 1990.12)である。初夏(12月初め)なので残雪が多く見られるが、岸壁の麓や地形の窪地の残雪の下には小さな氷河が数多くある。これらをどこまで氷河としてカウントするかにより、氷河の総数は大きく変わってしまう。
 また、ジン(Rui JIN, 2005)によると、中国国内の氷河総面積は、南極とグリーンランド氷床を除く世界の総氷河面積の8.7%を占め、計46,252個の氷河が存在している。この総面積と個数との関係が、かなり乱暴だが全世界で同様だとみなして外挿すると、総氷河個数は50万個超となる。どうやら、小さい氷河も含めれば(もちろん雪渓は除外して)計40万~50万個くらい、というのが近い数字だろうと私は思う。

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グリーンランド氷床の雪面模様

 成瀬廉二、2010/11/10、No.2100

 世界の多くの氷河研究者・関係者が登録しているメール網に、アメリカのSM氏が10月22日、写真を添付して以下の投稿をしたところ大きな反響を呼んだ。
 「先日(9.4)、ロンドンからロサンジェルスへ向かう途中、グリーンランド南部の北緯66度付近の氷床上を飛んだ。そこで、今まで見たことのない、興味深い雪面模様を見たので、どなたかその成因をお教えいただきたい。これらの写真は、高度約38,000フィートから、北または北西に向かって撮ったものである。問題の雪面模様は、何本か平行に走る幅広い、暗い帯である。-なお、写真の濃淡のコントラストを強調させたので、実際はこれほど暗いベルトには見えてはいないが-」

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 写真にて青い(水色)部分は融解水による水溜り、または表面の雪が水で飽和したスラッシュ(slush)と思われる。ここで問題にしている模様は、青い地帯に直行するように、左上から右下に走る5,6本の太い暗い帯である。(Photo: Greenland ice sheet, at around 66 deg North, 47 deg West, 4 September 2010; Courtesy of Scott McGee)
 この質問に対し12人からコメントがあったが、それらを分類すると以下の様になる。いずれも、主張の自信の程に強弱の度合いはあるが推論である。
[水]2人:青い地帯から水が表面を流れ、湿雪部分のアルベド(反射率)が低下したため。または、スラッシュ流(雪泥流)の跡。
[雲]1人:薄い雲、おそらく高積雲のレンズ雲の影。
[風]3人+ :風で形成された模様、すなわち新雪の堆積、または風で磨かれた雪面。
[霜、雪結晶]6人:雪面に成長した霜、あるいは雪の結晶は光学的に異方性があるので、雪面の結晶がある方向にそろっていると、太陽高度と観察者との向きの関係で、雪面からの反射が弱く(すなわち、暗く)なり得る。結晶の向きがそろう原因は、表面霜の形成時あるいは降雪時の風の向きである。したがって、この説明も[風]原因説に含まれる。
 以上のコメントを寄せた人の半数は、同様のパターンをグリーンランドまたは南極氷床にて、飛行機からか人工衛星イメージで見たことがあると言う。しかし、ある人は、上空から見た模様を調べようとスノーモービルで探しに行ったが発見できなかったそうである。多くの場合、このようなパターンは雪上からは見えないようである。
 私も南極で、海氷上に似たようなパターンをヘリコプターから見たことがある。しかしそれは、平坦な海氷上の凸部の風下に長く延びる雪の吹き溜まりであり、グリーンランドのこれは形や起伏や色合いがはっきり異なる。
 現場で、模様の形状、分布、雪質等を調べれば成因の概略は明らかになると思うが、地上で見つけることができなければ、調査もしようがない。したがって当分の間は、このように百家争鳴が続くのだろう。






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