三陸海岸 津波被災地 (1)~(6)

(1) ローカル線の旅
                         投稿日:2017/05/24、No.358
 学生時代には年に2回ほど、北海道と東京(または関西)を列車(旧国鉄)で往復した。その際、時には経路を少し変えたり、途中下車をしたりしたものである。

 しかし、東北地方の太平洋岸(三陸海岸)は、一度も通ったことがなかった。ローカル線を乗り継ぐと複数日かかるからである。

 大沼の南極OB会の帰途、5月17日と18日の2日間かけて、JR八戸線、三陸鉄道北リアス線、岩手県北バス、岩手県交通バス、三陸鉄道南リアス線、JR代替バス(BRT)の6路線を計10箇所で乗り降りして、宮城県の気仙沼まで三陸海岸を南下した。

 三陸海岸とは、陸奥(青森県)、陸中(岩手県)、陸前(宮城県、岩手県南部の一部)の三つの陸にまたがる太平洋岸地域を指す。

 このうち、陸中海岸が1955年に国立公園として指定され、その後2011年の東日本大震災からの復興および被害の伝承を目的として、2013年5月、青森の県立公園等を編入して、三陸復興国立公園に改称し、再スタートした。
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 写真は、陸中の浄土ヶ浜(宮古市)。マグマが固まってできた流紋岩の秀峰の頂部には松が見える。

(2)津波浸水深 
投稿日:2017/05/27、No.359

 新幹線八戸駅から電車で東に向かい(5月17日)、太平洋岸に着いたところが鮫(さめ)町である。鮫駅から海沿いに20分ほど歩くと、蕪島(かぶしま)と言う名の陸続きの小さな島があった。

 ここは、ウミネコの繁殖地として国の天然記念物に指定されている。その日も蕪島の岩壁、船着場、および付近の上空に、数多くのウミネコが飛び交っていた。
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 蕪島へ向かう途中の道路際の電柱に、「津波に注意」の標識が貼り付けられており、その下に「ここの地盤は海抜2.5 m」「2011.3.11 東北地方太平洋沖地震津波 実績浸水深2.8 m(上の青テープの高さ)」と表示されていた(写真)。

 写真の上端付近に、電柱に巻かれた幅広の青テープが見える。3.11津波におけるこの地点の津波の最大高さは、2.5+2.8=5.3 mだったことが分かる。

 津波の高さは、検潮所による観測値、建造物等の痕跡を調べた浸水深(+海抜高)、および場所によっては波が高くまで駆け上がる遡上高があり、同一地域でもいろいろなデータがある。

 青森県では、観測できた最大の津波の高さは八戸の4.2 m、現地調査では八戸6.2 mの痕跡が確認された(県による報告書)。

 津波災害を忘れないため、あるいは津波を体験しなかった人々のため、このような「浸水深」の標識は非常に意味がある。

 しかし、巨大津波に襲われた陸中や陸前の被災地では、このような標識看板を見かけることが少なくなった。浸水深が数メートル、あるいは10 mを超えると、標識を掲げる場所が限られるし、あっても人の目に触れにくいからであろう。

(3)巨大防潮堤 
投稿日:2017/05/30、No.361

 岩手県の久慈~宮古は三陸鉄道北リアス線、宮古~釜石はバス2路線、その後釜石~盛は同南リアス線に乗った。この三陸鉄道は、1984年、旧国鉄から移管された日本初の第三セクターが運行している。

 三陸海岸の北部では陸地が大きく隆起した海岸段丘、一方南部は陸が沈降してリアス式海岸となっている。そのため、北リアス線と南リアス線とでは海岸の景観が異なるが、いずれも海岸線の凹凸が著しい。

 凸部の尾根は、ほとんど全てトンネルで通過する。南北リアス線の総延長108 kmの内、トンネル数は62個、トンネルの総距離(61 ㎞)は全体の57%に達している。

 したがって、風光明媚な海岸地形を望むことができるスポットは限られている。さらに鉄道やバスが湾内の低地を走る地域では、海側は巨大な防潮堤が視界を遮り、海あるいは海岸の岩や浜が見えない(写真:北リアス線の久慈-田老間の車窓から)。
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 これは、津波防潮堤である。ほぼ完成しているようだ。堤の上の自動車の大きさから推定すると防潮堤の高さは8 mくらいか。三陸海岸では、このように凹部(湾や平野)にて至るところ、工事前、建設中、ほぼ完成、完成の防潮堤が見られる。

 地震は予測できないが、津波は規模と来襲時刻をある程度正しく予報できる。したがって、高台に避難が最も望ましい。しかし、歩いて避難できない人、深夜、暴風雨雪の場合など、適切な避難が難しいこともあろう。

 そういう点では、防潮堤は有効である。しかし、東日本大震災では既存の防潮堤を越波したり、堤が破壊されたりした地域もあり、また防潮堤があるから大丈夫と避難しなかった人も少なくない。

 また、海とともに暮らしてきた人々にとって、海が見えないことは耐え難いと、巨大防潮堤に反対の意見もあると聞く。では、防潮堤の背を低くするか、難しい問題である。

(4) 高台造成 
投稿日:2017/06/02、No.362

 陸前高田市では、震災の大津波にて浸水高(海面高)は14-17 mに達し、低地ではことごとく家屋が破壊され、流された。

 同市中心部の高田町では、世帯数2840戸に対し全壊家屋2047軒、また人口7600人に対し死者・行方不明者は1173人、という甚大な被害を受けた(高田市資料)。

 その高田市に、18日、バスで入った。平野部はあたり一面、点々と建物はあるが、樹木のない荒地で、クレーン車、ショベルカー、トラックなどがさまざまな作業を行っていた(写真)。
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 よく見ると、他の湾内の低地でもそうだったが、土砂を盛って地面を嵩上げしている(写真左)。そして奥の丘の上では、斜面を切り開いて宅地を造成している。

 陸前高田市の震災復興計画(2012.1)によると、防潮堤等の施設や避難道路などの整備とともに、住居地域の高台への移転が計画されていた。そして、海岸付近の低地部は、新産業ゾーン、公園、農用地等の活用を図るとしている。

 確かに、できることなら、居住区域は津波浸水の恐れがない高台が望ましい。それにしたがい、市のコミュニティーホールや消防防災センターが高台に新築されたが、市庁舎はその横で仮設建築物である。

 新しい市庁舎は、旧市街中心の低地に津波に耐えられる建築物とするか、周辺の高台に建てるか、住民の意見を求めているところである。これらのすべてが完成し、市の機能や住民の生活がもとに戻るまでには、あと何年かかるのだろうか。

 道半ばを超えたと思いたいが、そう簡単でもないように思える。

(5)奇跡の1本松 
投稿日:2017/06/05、No.363

 陸前高田市の海岸に近い荒地に、松の大木が1本だけ立っている(写真)。これが、震災のモニュメントとして保存されている「奇跡の1本松」である。最寄りのバス停にもこの名前が付けられている。
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 写真の右は、津波により全壊したユースホステル、奥のコンクリート構造物は新たに建造された防潮堤、その堤の向こう側が海である。松の木の右側の青色の柱は、警報やサイレンの拡声器と思われる。

 この地は、約350年前から先人たちが植林を行い、約7万本と言われる高田松原は市民の憩いの場所として親しまれてきた。ところが、2011.3.11の大津波により、松林は倒壊、流失したが、この1本だけが奇跡的に残ったのである。

 しかし、この松は長時間海水に浸っていたため、翌年、枯死が確認された。陸前高田市ではこの松を整備、保存することにし、保存プロジェクトを立ち上げた。

 その手順は、市ウェブサイトによると、以下の通りである。
*伐採、*抜根、*幹のくり抜き(2012年)、*幹に炭素繊維強化樹脂注入、*枝・葉部分の型取り、レプリカ作製、*根部分のコンクリート基礎工事、*現地設置・モニュメント完成(2013年)。

 弱った松を補強した程度のものと思っていたが、これはまさに本格的な記念碑である。 なお、この保存プロジェクトは国内外からの募金でまかなうこととし、目標額1億5千万円に対し、3779件、計1億8千万円の寄付が集まったそうである。

(6) BRTバス 
投稿日:2017/06/09、No.364

 大津波で著しい災害を被ったJR大船渡線と気仙沼線では、代行バスを運行している。これをJR東日本では、BRT(Bus Rapid Transit :バス高速輸送システム)と呼んでいる。

 盛~大船渡~陸前高田~気仙沼~大谷海岸の区間にてBRTを利用した。バスは普通の大型車だが、新しくきれいである(写真:気仙沼駅にて)。
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 ここのBRTは、原則的には線路敷をバス専用道として走る。線路敷は1車線なので、逆方向のバスと行き違うときは、退避場で少し待つ。線路敷が津波によって被害を受け、未修復の区間などでは一般道を走行する。

 盛から陸前高田までは1日に27本運行(平均35分間隔)しているので、ふつうの鉄道ローカル線に比べてはるかに運行頻度が多い。さらに専用道なので渋滞がなく、一般路線バスより定時性が高い。ただし、駅の間隔は、例外を除くと鉄道なみで長い。

 また、主要な駅(バス停)には待合室、トイレを備えたり、一部地域では住民の要望に応え、市役所、病院、仮設住宅や仮設商店街などに駅を新設している。

 BRTは、復旧までの暫定運行としているが、たいへん便利なのでこのまま定着するのではないかと感じた。

 5月19日、大谷海岸~気仙沼~一ノ関~東京~羽田~鳥取の経路を辿り、足掛け3日間の三陸海岸の旅を終えた。

     
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