パタゴニア氷河50周年、探検かトレッキングか?

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  (Photo) パンパ・デ・ニエベ氷河にて、調査メンバーと開拓牧場主+犬(1967年2月)
パタゴニア氷河研究50周年
投稿日:2018/06/07、No.451

 「4大学パタゴニア氷河探検50周年およびパタゴニア氷河研究計画35周年記念」シンポジウムとパーティー『パタゴニアの氷河を語る』が、6月4日(月)、東京千代田区一ツ橋のレストランにて開催され、元調査メンバー等30名が参集した(写真)。
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 本記念イベントの経緯と趣旨を、発起人代表の緒言から抜粋して以下に示す。

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『緒言』             (成瀬廉二)

 1967~1969年、南北パタゴニア氷原の氷河において、4つの大学から学生を主体とした探検や登山、または予備的な学術調査が、ほぼ同時期に、それぞれ独立に行われました。それらのパーティーには、将来、氷河学または関連分野をライフワークとした何人かの若者が参加していました。

 その人たちは、北大の成瀬廉二、京大の故井上治郎と安成哲三、六甲学院OBの岩田修二、そして東京工大の藤井理行でした。このときから、今年は50年目にあたります。

 それから約10年後、パタゴニア経験者の5人の間で「次はパタゴニア氷河の本格的な調査をしよう」との機運が高まり、文部省の科学研究費を申請することにし、研究代表者には京大隊の隊長だった中島暢太郎に引き受けていただき、1983年に「パタゴニア氷河の水文・気象学的研究」という題目で、めでたく海外調査費用が認められました。この初年度の現地調査から今年は35周年に相当します。

 以後、1980年代後半から研究代表者は成瀬に、1990年代後半から安仁屋政武、2010年からは杉山慎に代わり、この間、研究費は毎年連続していたわけではありませんが、予算がつかない年も、別の基金等を利用して、パタゴニアの氷河研究を続けてきました。

 我が国による氷河現地調査は、ある程度組織的に、明確な目的を持って行ったのは、1960年の北大の東晃らのアラスカ氷河調査でした。一方南極では、4次隊の石田完、5次隊の大浦浩文らが雪氷調査を行いましたが、組織的な長期雪氷計画が始まったのは1968年の第10次隊からです。

 ヒマラヤでは、名大の樋口敬二を代表とする「ネパール・ヒマラヤ氷河学術調査」が1973年にスタートしました。つまり、日本の氷河研究は、1970年前後に南極とヒマラヤで始まり、以来ずっと継続していますが、パタゴニアも一歩遅れながらも、氷河研究の第3極の位置を占め、氷河研究の発展に寄与してきた、と言えるのではないでしょうか。


探検か探策トレッキングか
投稿日:2018/06/11、No.452

 50年ほど前の昔話が続いて恐縮だが、もう1話だけ。

 パタゴニア50周年記念イベントのタイトルには「4大学パタゴニア氷河探検」と称したが、一方シンポジウムにおける成瀬の発表では「北氷原山麓の氷河探策トレッキング(1967年)」という演題にした。探検と探策トレッキング、どう使い分けたのだろうか。

 パタゴニアの西側(チリ)では、主な川の下流~中流に2、3か所開拓牧場がある。彼らが入植したときは、環境保全の意識はなく、森林を伐採し、所によっては森を焼き、放牧に適するよう草原化を図ったのである。

 港町アイセンから南へ約180 km、フィヨルド(氷食谷の峡湾)内を週1便の小型定期船で18時間かかってエクスプロラドーレス(以下、Exp)河口に着き、そこの牧場をベースキャンプとした。

 当時、空中写真をもとにした暫定地形図があり、主な氷河が描かれていた。また、Exp川に沿っては牛、羊の放牧のため「馬道」が明瞭にあり、我々はそれを辿って氷河へ向かった。だから、道なき山奥やジャングルをかき分けて進む探検というよりは、氷河探策トレッキングの方がふさわしい。

 Exp川の本流から支流に入ると、森林や草原はなくなり、モレーンの石の原となる。そういう所には放牧に入らないので、牧場主は、石の原の上流に氷河や雪原があることは知っているが、行ったことがない。

 したがって、支流のルートおよび氷河については、今まで誰かが訪れたという記録や伝聞情報も全くなかったので、まさしく「探検」(=未知の地域に踏み込んで、そこを調べること<岩波国語辞典>)にふさわしい行動であった。

 すなわち、行動の全体としてはトレッキング的であったが、目的地周辺では探検だったと言える。ただし、近年はあまり使われないが、「危険を冒して」の意が込められている「探険」は、私たちはしない。
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 写真(1967年2月)は、パンパ・デ・ニエベ氷河(後に、Exp氷河と命名)の下流部分を探検するミロ君(チリの大学生)と筆者。背景はサン・バレンティン山(3910 m)。


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