下降風;海底探;極春;洞穴;極夏;西南極;水使用;南極融;氷掘削;日ス旅

「ハイドロリックジャンプ」  澤柿教伸(47次南極越冬隊)、 2006/10/01(Sun)、 No.1055
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南極大陸は,鏡餅のような氷でできたドームの形をしています.その中心部の標高は4000m近くあり,海岸線から内陸に向かって標高を上げますが,それに伴って表面の気温も低下します.内陸部でつめたく冷やされた空気は重く,お餅の表面を伝うように南極大陸斜面を駆け下ってきます.これが「カタバ風(斜面下降風)」です.

カタバ風は,大陸縁辺部で海域の暖かい空気とぶつかると,うまく混合されずに上方にジャンプします.この現象を「ハイドロリックジャンプ(はね水)」といいます.

スカルブスネスに滞在中のマイナス30度まで冷えた朝,大陸縁辺部の上空に雪煙が舞い上がっているのが見えました.きっとハイドロリックジャンプにちがいありません.その高さはおそらく300m以上はあると思われます.

昭和基地以外の方向からハイドロリックジャンプの様子をとらえることができたのは,めずらしいことでした.

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「海氷域での海底探査」 

                澤柿教伸(47次南極越冬隊)、2006/10/01(Sun)、 No.1054

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昭和基地は,気温はまだマイナス20度ときびしい寒さが続いているものの,極夜期を過ぎて太陽が戻り,雪氷が光り輝く初春の季節を迎えています.野外活動も活発になり,南極氷床沿岸に点在する露岩域への調査旅行も開始されました.9月中頃には,昭和基地の南にある,ラングホブデ・スカルブスネス・スカーレンといった主要な露岩域まで,海氷上にルートが建設され,その総延長は100km以上になります.

9月上旬には,私もメンバーである第四紀地質調査チームがスカルブスネスに長期滞在して,海底堆積物の音響探査と堆積物の掘削を行いました.オーセン湾と呼ばれるスカルブスネスの内湾には,日本南極観測隊が古くから注目してきた氷河堆積物があります.その堆積物が海底にどのくらい延長して分布しているのかを探ろうというのが目的です.

これまで日本の南極観測隊では.何本かの海底コアが採取されたことはあるものの,せいぜい1mほどのコアしか得られていませんでした.今回は,サイドスキャンソナーやサブボトムプロファイラーなどの物理探査装置を持ち込み,さらに,大口径のグラビティコアラーを用いて,昭和基地の周辺海域のあちこちで,最大5mのコアを採取することをねらっています.これらの手法は海洋研究では一般的なものですが,常に2m近い氷に覆われた海氷域で実施するのは世界的にも初めての試みとなります.そのため,大口径の海氷掘削システムや水平ウィンチを用いた探査機巡航システムなどを新たに開発し,今回の本番に備えてきたわけです.

なにぶん初めての試みですし,南極のぶ厚い海氷と厳しい寒さが相手の仕事です.実際の作業では,道具の使いこなしから新しく開発した機器の調整に至るまで,試行錯誤の連続となりました.その結果,オーセン湾では,2.5m分の堆積物が詰まったコアラーを引き上げることに成功しました.

オーセン湾で積み重ねた経験を生かしつつ,10月末にかけて,他の海域でも同様の探査・掘削を継続しているところです.

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「春到来」

                 澤柿教伸(47次南極越冬隊)、2006/10/01(Sun)、No.1056

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明るくなって,昭和基地の周辺に動物の姿をみかけるようになりました.といっても,何種類かのアザラシとペンギンに限られますが.

写真は,我々が海底探査のために掘削した海氷の孔を使って息継ぎにやってきたアザラシです.昭和基地のすぐそばには,身ごもったアザラシも見かけます.赤ちゃんアザラシが見られるのももうすぐでしょう.

探査場所への途中で,皇帝ペンギンの足跡もみかけました.昭和基地周辺にはアデリーペンギンしかおらず,皇帝ペンギンのルッカリーは基地から東へ数百キロも離れたところにあります.そこからはるばる昭和基地周辺までやってくる皇帝ペンギンを見かけることがごくたまにあるようですが,今回の越冬では今のところ足跡の確認にとどまっています.運が良ければ会うことができるでしょう.

アデリーペンギンは10月半ば過ぎから,基地周辺のルッカリーに戻ってきて交尾・産卵・子育てを始めます.

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「氷河ダムに開いた穴」 

                澤柿教伸(47次南極越冬隊)、2006/10/25(Wed)、 No.1154

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昭和基地の南方約30kmのところにラングホブデという露岩域があります.その中央部に「やつで沢」という谷があって,その源流部には大陸氷床から氷河が逸流しています(写真右上).やつで沢の途中には脇からも別の氷河が伸びていて,谷をせき止めるダムのようになっています(写真左上).その背後には氷のダムでせき止められてできた池(写真右上)があって,大陸から流れ出す氷河の溶け水の受け皿になっています.

いつの頃からかは定かではありませんが,この氷のダムの真ん中に大きな穴が開いていることが確認されました.おそらくここ1-2年のうちに開いたものと思われます.大変興味深いので,そばまで行ってみることにしました.穴は100m近い高さの氷壁の真ん中に開いているので,中に入るのは無理だろうとと思っていたのですが,直下まで行ってみたら,ちょうど人が通ることができるくらいの切れ込みが入っていました(写真左下).たぶん,融解期に水が流れ出して下刻した跡だろうと思います.

そこを伝って中に入ってみると,入り口の穴の大きさからは想像できなかった巨大な空洞になっていました(写真右下).洞の側壁は垂直な基盤岩で,その上を氷河氷が覆っている,典型的なSubglacial Spillwayであることを確認しました.

洞の奥のほうには崩れた氷のブロックが積み重なっていて,せき止めている湖へ通じているかどうかは分かりませんでした.今の時期はマイナス15度~20度くらいまで冷えていて池は完全に凍結していますのでそれほど危険は感じませんが,いつ上の氷が崩れ落ちてくるかと思うと,あまり永居する気にはなれない場所です.特に,融解期には,せき止めている湖からの逸流があるかもしれませんし,最悪の場合,鉄砲水が出る危険もあるでしょう.

いずれにしても,氷河地形屋として非常に興味深い代物です.やつで沢の河床には水流現象があったことを示す円摩された礫が堆積していて,この谷の発達過程を物語ってくれています.そのようなことを根拠に,だいぶ前ににやつで沢の地形形成過程について論文を書いた事があるのですが,その解釈が正しかったことも証明してくれる穴でした.

氷河水文学を専門にされている方からのコメントもいただけると幸いです.

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Re: 氷河ダムに開いた穴 

                     成瀬廉二 - 2006/10/28
、No.1164

 南極にもこんなに大きな氷の洞穴があるのですね。驚きました。

 今年の6月、レイキャビックでの会議の合間に、氷河洞穴探検のビデオ映画の試写を見る機会がありました。多国籍のスピリオロジスト(speleologist;洞穴探検家)のチームがアイスランドの氷帽の底の洞穴を探検したときのものです。洞穴(氷のトンネル)の底には激しく水が流れ、所によっては天井が低く、身を横にしないと通過できない。滝もあった。スピリオロジストのウェアは泥だらけ、びしょ濡れ。

 大変迫力のある映画でしたが、これを見ながら、厚さ200-300 m(?)の氷の重みでトンネルがつぶれたり、部分的に崩壊して帰れなくなるなんてことはないのかな、と心配になったものです。また、氷の割れ目から多量の水が出水してきたらどうするのだろうか、と思ったときでも、ヘッドライトで照らされた彼(女)等の顔は嬉々として、歓声をあげながら奥に進んでいました。

 澤柿君に、「写真をたくさん撮ってきて、ビデオもあればいいね」と言いたいところですが、それはとてもとても怖くて声にすることができません。

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「夏到来」

                  澤柿教伸(47次南極越冬隊)、2006/12/10(Sun)、 No.1356

第48次観測隊をのせたしらせは,南極圏(南緯55度以南)にはいり,昭和基地に向けて順調に航海を続けている模様です.

次隊受け入れ準備で昭和基地も忙しさを増しています.特に,夏作業でトラックなどの装輪車が走行できるように,オングル島内の道路の除雪が急ピッチですすんでいます.ブルドーザーやパワーショベルなどの重機にならんで,もう一つの除雪の戦力になっているのが「砂」です.

雪面に砂をまくことでアルベドを下げて,太陽の放射熱で解かします.あまり厚く撒きすぎるとかえって融解を押さえることにもなりますが,昭和基地周辺では,丁度砂粒2層ぐらいが最も効果的なようです.

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白夜で沈まない太陽は,砂によって24時間働いてくれる優秀な除雪機関として利用されています.

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No.1321「西南極氷床の観測」

                           松岡健一、2006/12/04(Mon)

 昨年に引き続き、今年は2ヶ月間の予定で、西南極氷床でのフィールドワークに出かけます。先週の金曜日にシアトルを出発し、ニュージーランドのクライストチャーチに到着。ここまでは普通の航空会社の飛行機です。クライストチャーチの空港直ぐ隣のInternational Antarctic Centereにある建物で、フィールドワーク用の衣類を受け取り、最終準備をします。写真は、受け取る衣類の展示です。

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 今朝は6時半に集合。南極用の衣類に着替えC130と呼ばれるプロペラ機に搭乗し9時に出発しましたが、出発後1時間半ぐらいで、油圧系統にトラブルが生じ引き返し。修理後出発体制に入りましたが、更に2つのメカニカルトラブルが発覚しフライトはキャンセルになりました。ちなみにC130だとマクマードまで7時間半かかります。

 明日の朝もう一度トライです。明日はC17と呼ばれるジェット機でフライト予定なので、マクマードまで5時間です。既にマクマードにいる先発組によると天候は良好とのこと。天気の良い間にマクマードに着く事を祈るばかりです。

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No.1434「マクマード基地から」

                         松岡健一、2006/12/26(Tue)

 12月5日に基地入りして以来、装置の調整や野外観測の準備をしておりました。24,25日のクリスマス休暇でリフレッシュもして、明日朝、大型プロペラ機C130で3時間半かけて、西南極中央部に出発。1ヶ月の観測旅行が始まります。

 マクマード基地は約1100人が滞在中。食事は無料ですが、小さなコンビニ?兼お土産物屋さん、それにバーは有料。ビールが1-3ドル、ワインがボトルで15ドルから。ワインは昨年の倍程度に値上げされたのですが、毎日繁盛しています。お支払いはクレジットカードか現金で。普通のATMが1台あります。と言う具合にマクマードは、南極と言うよりも飯場, mining townと言う感じです。

 写真は海上から見たマクマード基地。昭和に比べると、大きくて坂が急勾配という点は違いますが、基地の基本的な構成は昭和基地と驚くほど似ています(両端に燃料タンク、中央部に居住区・食事区画、両端に向かってその他の建物)。とても忙しく過ごし疲れて下を向いてあくせく歩き、ふと顔を上げたとき、自分が昭和にいるような気になったことがありました。

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No.1564 「南極における水使用量」 

成瀬廉二、2007/05/04(Fri)

 IPCCの第4次評価報告書(2007年)によると、近い将来の降水量は、高緯度地域では現在より増加する”可能性が非常に高く”、亜熱帯の陸域の大半では減少する”可能性が高い”、と予測されている。アフリカや中央アジアや南米の一部地域のように乾燥または半乾燥気候では、温暖化にともなう蒸発散量の増加とあいまって、深刻な水不足が懸念される。

 ところで、いったい日本人は日常生活のためにどの位水を使っているのだろうか、とインターネットで調べてみたら、標準家庭では平均1日1人あたり200~300Lというデータがあった(奈良県水道局)。ずいぶん多いな、という印象である。

 では南極ではどうだろうか。私が最初に越冬した第10次隊(1969-70年)の昭和基地では1日1人あたり43Lだったそうである(佐野雅史による)。1日に最低約20Lは必要、と昔どこかで聞いた(読んだ)記憶があるので、これは大体妥当な数字である。ところが最近の昭和基地は、第43次隊(2002-03年)では125L、45次隊(2004-05年)では130Lとなっている(南極観測隊報告など)。トイレは水洗、浴室ではシャワーから湯が出るという日本に近い生活様式となったので、水使用量も日本に近くなっている。

 雨が多い日本では水資源の枯渇ということはそう簡単には起こり得ないが、水を’湯水のごとく’使う習慣が身についてしまうと、やがて日本でも、時により地域により、大きな水問題が生ずることは容易に予想できる。

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 写真:南極昭和基地では、毎日、吹きだまりの雪や氷山の氷を採りに行き、貯水槽に入れ、発電機の排熱で融かし、水を造っている(1969年)。

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南極氷床で大規模な融解か? 

            松岡健一、2007/05/28、No.1573

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日本の新聞にも出ているようですが、南極で2005年1月に大規模な融解が起こっていたという結果が、NASA JPLからプレスに流れました。JPLのwebサイトには大きなイメージが載っています。
http://www.jpl.nasa.gov/images/earth/arctic/arctic20070515-browse.jpg
端的に言うと、Quickscatというマイクロ波(携帯電話よりも少し周波数の高い電波)を衛星から発射して、地表近辺で散乱されて衛星に戻る様子を調べたというものです。解析チームは長年のデータを解析して2005年1月にだけこのようなパターンを見出しています。

個人的には、私はこの結果に懐疑的です。理由の一つは、解けた地域と標高とが全く相関しない点です。Ross海(jpgイメージで言うと中央下)には棚氷が広がり標高も低いですが、Ross海が全く解けないのに、Ross海よりも標高の高いRoosevelt島、Ross海から内陸へ登っていくところ、で解けています。標高に加えて、斜面が太陽を向いているかどうかも重要な要素なので、標高だけで判断するのは早計ですが。

この結果が発表された論文を読んで書き込もうと思ったのですが、この結果は査読論文としてではなく、解説本で報告されているのみです。
マイクロ波の専門家に聞いてみようと思いますが、?マークのつく報道だったので、ちょっと先走って書き込みました。

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No.1568 ドームふじ氷床コア最深部の観察

                     飯塚芳徳@低温研、2007/05/11(Fri)

 5/9~5/10、去る4/16に南極から北海道大学低温科学研究所に搬入されたドームふじ氷床コア(JARE48掘削分)の観察会が行われました。

 JARE48によるドームふじ氷床コアは長さ約6m、最深部が3035.22mです。国立極地研究所の本山先生を初めとする精鋭約10名が来所され、氷コアの層構造の記載や写真撮影などが行われました。また、それまでの浅いコアでは見つからなかった黒色の物質(岩石?生物?)の顕微鏡観察などが行われました。

 この観察会は今後の最深部解析の方向性を決定するための初期的なもので、ミクロトームなどの切削すら行わない完全非破壊なものでした。今後の解析による成果が期待されています。

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No.1608  “日本・スウェーデン合同南極氷床観測計画”

                      (原文)榎本浩之、(編集)成瀬廉二、 2007/10/20(Sat)

 この10月末に日本を出発する、私たち第49次南極観測隊(JARE)夏隊の別働隊による南極氷床内陸広域踏査計画をご紹介します。

 昭和基地付近のS17航空拠点(標高550m)から、ドームふじ基地(標高3,810m)を経由し、コーネン基地、ワサ基地(西経13度)を結ぶ、片道全長約2,800km のルートを雪上車で旅行します(添付記事内の地図参照)。

 主な観測は、アイスレーダによる基盤地形、氷床内部層ならびに氷床下湖(注)の探査、およびマイクロ波放射計を用いた氷床表面付近の電波放射および積雪層構造の調査です。

 内陸旅行メンバーは、JARE49夏隊員4名[藤田秀二、榎本浩之、杉山慎、谷口和幸(いすず)]、JARE48 越冬隊員4名[福井幸太郎、中澤文男(以上、気水圏)、金子弘幸(大原)、志賀尚子(医療)]です。

 JARE49の4名は、11月2日、南アフリカ・ケープタウンから共同運航便にて南極ノボラザレフスカヤ基地へ飛び、そこからバスラーターボ機に乗り換え、S17へ向かう。待機しているJARE48隊員とともに旅行準備を整え、雪上車4台で内陸へ出発。ほぼ同時期に、スウェーデンの内陸旅行チームもワサ基地を出発します。

 両隊の会合点(予定位置:75.96度S; 26.0度E)でJARE49の2名がスウェーデン隊に入りワサ基地へ向い、一方スウェーデン人2名が交換科学者としてJARE に入り、S17まで同行し、共同観測を行います。

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 添付は北海道新聞の記事です。ノーベル賞以上に大きく扱われました。同じ紙面に出た北大低温研の海洋観測の話題は大変重要な成果があるのですが、裏側の2面にまわりました。北海道を元気にするにはこちら南極の方が威勢がよかったのでしょう。

注)南極氷床のあちこちに、氷の底と岩盤との間に、液体の水の湖が存在することが分かっている。その内最大の湖は、ボストーク(Vostok)湖で、厚さ4,000mの氷の下にあり、長さ250km、最大幅50km、水深200~800mである(WikipediAより)。







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