不都合真実;キリマン氷河;暖冬温暖化

 不都合な真実          成瀬廉二、2007/03/30(Fri)、 No.1553
 六本木ヒルズの映画館で”不都合な真実(An Inconvenient Truth)”を観た。「南極、北極や、ヒマラヤ、パタゴニアの氷河の映像は迫力があった」と知人から聞いていたので、是非にと思っていた。
 アル・ゴア(Al Gore)が深く関わった映画で時々登場するのかな程度の認識だったが、1時間半の全編はアル・ゴアの地球温暖化に関するスライド講演をもとに構成されていた。政治家だから講演は得意とは言え、気候、気象、氷河から経済、政治の幅広い諸問題にわたり、聴衆を惹きつけ、説得力のあるゴアの語り口に、あらためて感心した。

 氷河の映像は、”眼に見える温暖化”という題材として使われているので、「これはどこの氷河だ?」と思っている内に、残念ながらすぐ次のシーンに移ってしまう。キリマンジャロ山の氷河の場面で、氷試料分析で著名なロニー・トンプソンがちらっと登場したが、何か一言でも喋らせた方がトキュメンタリーとしては良かったのに、と私は思った。全般的に、自然の映像、グラフィックスは素晴らしいが、内容は多岐にわたり問題は根が深いので、理解しながらついて行くのは簡単ではない。

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Re: 不都合な真実 

                   Kenny、2007/04/04: No.1554

私もこの映画を見る機会がありました。ちょうど、南極に向かう途中のロスからオークランドへの飛行機だったので、タイミングよく楽しんだしだいです。

私がこの映画が素晴らしいと思ったのは、例えば、以下のようなシーンです。ハワイと南極点で観測された二酸化炭素濃度の変化を示し、近年の急激な濃度上昇を語るシーンがあります。ここでAlは「なぜハワイの二酸化炭素は季節変動をして、南極点では季節変動がないのか」にもきちんと言及をします。自分の主張(近年の急激な二酸化炭素濃度上昇)を説明するだけでなく、図を見て知的好奇心を持つ人ならひとえに疑問に思うであろう点を、丁寧に説明してるのは立派だなと思いました。

研究者がGeneral audienceを対象に話すテクニックを学ぶという点でも、この映画はとても参考になります。やっぱり、喋りは破格にうまいです。

これとは正反対のハチャメチャな主張もあります。

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  No.1578     “キリマンジャロの氷河” 
                  
                            柳沢良則、2007/06/17(Sun)

はじめまして。雪氷に興味を持つものです。

ゴア氏の『不都合な事実』において、キリマンジャロの氷河が減少していることがイメージフラッグとして使用されております。しかしながら、地球温暖化の温度上昇は極地方で大きくなる、という理解でおりましたので、違和感がありました。そうしましたところ、先日、American Scientistに、キリマンジャロの氷河減少は、温暖化が主要因ではない、という記事が載りました。
http://www.americanscientist.org/template/AssetDetail/assetid/55553
気球計測での気温変化が乏しいこと、乾燥した高山帯ゆえにペニテンテスが形成されていることなど、整合性ある内容となっているように感じますが、氷河の専門家である皆様は、この記事をどのようにお考えになられますでしょうか?

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  Re:“キリマンジャロの氷河” 

                  白岩孝行、2007/06/17(Sun): No.1579

柳沢様

こんにちは。京都にある総合地球環境学研究所に勤めております白岩と申します。

とても面白い記事をご紹介いただきありがとうございました。著者の一人のGeorg Kasser教授は熱帯の氷河の専門家ですから、記事で紹介されている話の信憑性は高いと思います。

一方で、キリマンジャロでは雨季と乾季がはっきりしていますので、乾季の間は昇華、雨季の間は融解による消耗が起こっていると思います。数年前にオハイオ大学のロニー・トンプソン教授が掘削したキリマンジャロ山のアイスコアの氷温分布でも、この氷河で融解が起こっていることが間接的に示されていました。つまり、氷河全体が融解温度に達しつつあるということで、昇華だけが卓越するのであれば、氷温はもっと低いまま保たれるはずです。

そんなわけで、昇華も重要な消耗の要因と思いますが、融解も無視できないので、ご紹介いただいた記事のようにキリマンジャロ山の氷河の縮小が温暖化と無関係ではないという極論にはならないと私は考えています。

Kasser教授たちのオリジナル論文が楽しみですね。

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一部修正: 白岩孝行、2007/06/18(Mon): No.1583

No.1579の投稿で一部誤りがありました。読み返したら意味が通りませんので、以下のように修正お願いします。

誤)キリマンジャロ山の氷河の縮小が温暖化と無関係ではないという

正)キリマンジャロ山の氷河の縮小が温暖化と無関係という

でした。お騒がせしてすいません。

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Re: “キリマンジャロの氷河”  投稿者:柳沢良則、2007/06/17(Sun): No.1580

こんにちは、白石さん

早速のご返信を頂きまして、ありがとうございます。

onlineの記事でも、温暖化は間接的には関係あるだろう、となっているようです。どうも最近は、科学ではなく政治プロパガンダとして自然現象が語られることが多く、一体、どの内容にどの程度、信をおいていいのか、私のような無学の者にはなかなかやっかいな状況といえます。今後ともよろしくお願いします。

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Re: “キリマンジャロの氷河” 

                   成瀬廉二、2007/06/18(Mon)、 No.1584

 柳澤さん、記事の紹介と問題提起、および白岩さん、コメントありがとうございました。

 10年前の論文(*1)ですが、写真測量と人工衛星データの解析により、キリマンジャロの氷河面積は1912年から1989年の間に4分の1に減少したことが報告されました。その原因について明確には論じていませんが、同氷河の消耗(融解や昇華)を引き起こす熱源としては日射が最も重要との観点から、「終日快晴」と「午前快晴、午後雲量0.5」の条件におけるモデル計算を行って氷河が受けとる日射エネルギー量を比較しました。

 また、2006年のアイスランドにおけるシンポジウムで発表された論文(*2)では、無人気象観測の結果をふまえ、キリマンジャロ氷河の端の垂直な氷壁の後退には、地熱で温度が高い周囲露岩からの長波放射の寄与が無視できない、と主張しました。

 私は、柳澤さんのご指摘通り、キリマンジャロ氷河の急速な衰退は、地球温暖化の”直接”の結果ではないと思います。しかし、地球規模の環境変化が間接的に影響を与えたか、あるいは引き金になったことは十分考えられます。今後の面白い、重要な研究課題だと思います。

*1) S. Hasterrath & L. Greischar (1997): Glacier recession on Kilimanjaro, East Africa, 1912-89. Journal of Glaciology, 43(145).

*2) T. Molog, N. Cullen, D. Hardy & G. Kaser: Volcanic and climatic components in forcing glacier recession on Kilimanjaro: clear and less clear factors. IGS Symposium “Earth & Planetary Ice-volcano interactions”, June 2006 (Abstract).

画像

  [写真:キリマンジャロ山頂の氷河(杉山慎、撮影)]

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Re: “キリマンジャロの氷河”  

                       Kenny、2007/06/26(Tue): No.1587

ご紹介されている記事の第一著者であるPhil Moteの講演を聴く機会がありました。American Scientistの記事はまだ読んでいないのですが、彼の講演でもう一つ面白かったのは将来予測の部分でした。数々の気候モデルで予測をすると、キリマンジャロ周辺は今後温暖化すればするほど降水量が増える、キリマンジャロ山頂付近では温暖化しても雪として降るので、温暖化すればするほどキリマンジャロの氷河は成長する、そういう話でした。

キリマンジャロを温暖化のシンボルとして使っていると後で辻褄が合わなくなるから、温暖化のシンボルとして使うのはもう辞めよう、そういうメッセージだと私は理解しました。

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No.1549 “暖冬と地球温暖化”   

                    成瀬廉二:2007/02/25 

 今年は日本全国で暖冬傾向にある(*)。特に温暖積雪地の鳥取では、雪が降らず、積もらず、いっそう暖かい冬を実感するようである。
 最近、小さい会合などで、地球温暖化や氷河変動に関する講演やトークをいくつか行った。

「東京の年平均気温は過去100年で約3℃上昇したが、世界の平均気温の上昇は過去100年で‘わずか’0.7℃程度である(**)。南極の昭和基地では、過去40年間、気温の上昇傾向は認められない」
「今年の冬は、確かに‘異常に’暖かいが、これに近い暖冬や逆の寒冬は繰り返し起こっている。つまり、気温や降水量の年々の振れ幅は、長期的な変化幅に比べてかなり大きいものである」
 という話をしたところ、
「新聞やテレビでは、地球温暖化がいま急速に進み始めたように言うので、本当だろうかと疑問に思ったが、今日の話で納得した」
という意見と、
「そうは言っても、雪がぜんぜん降らない今年の暖冬は、人間活動のせいでしょ?」
との質問などがあった。

 当NPO法人の設立の趣旨は、「......氷河や雪氷圏に関する諸問題を広く伝え、人びとの地球環境保全への意識向上に資する.....」としているが、講演を聴きに来てくれる人はある意味では相当‘意識’が高い。そこで私は方針を少しだけ変え、まずは‘熱を冷ます’ことにも力をそそいでいる。

(*) 2007年1月の日本の平均気温(大都市を除く17地点の平均値)は、平年値(1971-2000の平均)より約1.4℃高い(http://www.data.kishou.go.jp/climate/)
(**) IPCCレポート(2007)によると、世界の平均気温は1906-2005年に0.56~0.92℃、中央値として0.74℃上昇した。

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