氷河ハザード研究集会、51次南極出発、ウィーンの旅(Photos)

氷河ハザードの国際集会 (上)      成瀬廉二、2009/11/27、No.1960
 
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 標記(略称)の会合が、11月10日から13日までオーストリー・ウィーンのボク(Boku)大学および隣接のホテルにて開催され、各国から約70名の研究者、技術者が出席した。(氷河ハザードとは一般の人には馴染みのない用語であり、その意味と内容については次回に解説する。)

 氷河研究の第一線からはリタイヤーした私だが、氷河への興味と探究心は薄れることはない。インターネットや学術雑誌等で最新の研究趨勢や成果を知ろうと思えばある程度は叶えられる。しかし時々は、生の発表を見、報告を聞き、会話(情報交換、議論など)をすることが、氷河への感性を維持するためには重要である。

 そういう状況のため、氷河ハザードが特に専門というわけではないのだが、たまたま今年は時期と場所が私にとって都合が良かったので、この集会に一般参加として出席することにした。

 なお、本集会の正式名称は非常に長く(*)、日本語に訳すと以下の様になる。
「山岳地域における氷河または永久凍土に起因する危険性、および氷河湖決壊洪水に関する国際研究集会=諸過程・評価・防止・軽減=」

* International Workshop ”Glacier Hazards, Permafrost Hazards and GLOFs in Mountain Areas: Processes, Assessment, Prevention, Mitigation“

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              [写真:基調講演をするWilfried Haeberli教授(チューリッヒ大学)]


氷河ハザードの国際集会 (中) 

                      成瀬廉二、2009/11/29、No.1961

 ハザードという語は、日本では車のハザード灯や、火山噴火の際に溶岩流や火砕流による被災予測地図としてのハザードマップ等として使われている。自然災害が多い我が国だが危機管理の意識が希薄だったためか、hazardに相当する日本語が成熟せず、多くの場合カタカナで表記される。

 オックスフォード英英辞典によると、ハザード(hazard)は「危険となったり、損害を引き起こす可能性のある事象.(訳、成瀬)」(a thing that can be dangerous or cause damage)と説明されている。

 しかし、これだけではどうも良く分からない。そう思っていたとき、ある講演から、工学やリスク管理の分野で以下の公式があることを知った。
[risk(リスク)]=[hazard]x[vulnerability(脆弱性)]
すなわち、ハザードが小さくても脆弱性が高ければ(防御設備や対策が弱ければ)リスク(危険性)は高まり、逆に脆弱性が低ければ(強固なら)ハザードが大きくてもリスクは低い。

 本ワークショップは、最新の研究成果を発表して議論するシンポジウムとは異なり、問題点を整理し、今後行うべきことを報告書として取りまとめ、関係方面、諸機関に提案、提言することを第1の目的としている。ワークショップは、講演、分科会の討論、ポスター発表(写真)の3部に分かれて催された。

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氷河ハザードの国際集会 (下) 

                      成瀬廉二、2009/12/01、No.1962

 ハザードには、偶発性という要素を含むので、氷河上でのスリップとか、クレバスへの転落や氷の崩壊など、日常茶飯事的な危険性、災害可能性は含まない。

 今回のワークショップでは、講演の部は全般的なハザードに関する話が多かったので、ポスターにて発表された研究を、対象別に大雑把に分類してみたら、以下のような件数の分布となった。

GLOF(Glacial Lake Outburst Flood、氷河湖決壊洪水):12
ラハール(lahar、火山泥流)+ 土石流:5
氷なだれ:3、落石:3、岩石氷河:2、凍土:2
氷河ハザード一般:6、その他:5

 これらの研究の多くは、地球温暖化を背景に考えている。すなわち、温暖化で山岳氷河が後退すれば一般に氷河湖が拡大するし、氷河が後退した斜面や、凍結が融解した岩からは斜面崩壊や落石が起こりやすくなる。

 なお、日本から参加して研究発表した人は奈良間千之君(総合地球環境学研究所)ひとり、というのは寂しい感がした。日本の氷河研究者も、ヒマラヤやブータンでGLOFの研究を行ってきたが、今回のワークショップおよびこれを踏み台とした次のプロジェクトは、日本とは関わることなく推進されて行くように思われた。

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[写真:ポスターの前で議論する参加者.写真左端が、オーガナイザーのAndreas Kaeaeb(オスロ大学)]

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51次南極観測隊出発 

                    成瀬廉二、2009/11/25、No.1958

 11月10日、成田空港の出国ゲート付近で、51次南極観測隊の先発班の出発に遭遇した。見送りに来ていた極地研究所の白石教授を見かけ、送られる側には北海道の雪崩対策で活動を共にしたことがあるカメラマン阿部幹雄氏がいた。 彼らは、セールロンダーネ山脈の地学調査パーティーで、空路にて南極に入るため南アフリカへ向かうそうである。

 送られる人が数名、見送る人がその3倍程度、実に静かな、淡々とした出発光景に時代の相違を感じた。

 30-40年前の「ふじ」の時は、晴海埠頭の岸壁にはあふれる程の人々が見送りに集まり、定刻になると汽笛とともに船は超ゆっくりと離岸し、隊員・乗組員と家族・関係者を結ぶ1000本を超えるであろう5色のテープの最後の1本が切れた瞬間、船は再び長音の汽笛を鳴らし徐々に速力を上げて埠頭を離れて行く(写真:1968.11.30、撮影者不詳、「第10次南極越冬隊の記録」より)。この出発のイベントは、人によって思うことと感じ方は大きく異なるが、いずれにしろ感慨深く、感動を与えるものであった。
 
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 さて、私が成田空港に帰国した昨(24日)夜、51次南極観測隊の本隊が成田を出発したそうである。その隊の同行取材班として朝日新聞の中山由美記者がいたはずである。同氏から出発直前に送られてきたメッセージの一部を以下に転載する。同記者からのホットな南極情報を期待したい。

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 (前略)
もしかしたら、もうご存じかもしれませんが、私、51次南極観測隊に同行し、再び南極へ赴くことになりました。24日に出発します。

45次隊に続き2度目となる今回は、前とは違うもの、前以上ものを目指し、新聞だけではなく、テレビ、ネットに携帯電話へと情報を同時発信していく予定です。

もし可能でしたら、氷河・雪氷圏環境研究舎のHPで、朝日新聞のアサヒコムの「南極プロジェクト」のページをご紹介しただけましたら幸いです。
http://www.asahi.com/antarctica/
相互リンクもぜひ、ご検討下さい。

☆南極のホットなニュースを新聞、テレビ、HP、携帯電話でお楽しみ下さい☆

中山 由美 Yumi Nakayama


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