アルプスの氷河質問;航空測量;融氷;続キリマン;北極氷;Green融解"

No.1593    氷河の質問    三上真穂、 (Date: Sat, 11 Aug 2007)
 はじめまして。
 私は小学4年生で、夏休みの自由研究で氷河について調べています。
 今、スイスのジュネーブの近くに住んでいます。
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 氷河について質問させてください。

質問1 どうして氷河は青く見えるものと白く見えるものがあるのですか。
 私は空気が入っているから青く見えるのかと思います。白いものはどうしてなのかわかりません。
 お父さんは青く見えるものには空気が入っていないくて
白いものには入っているのではないかと言っています。どうなのでしょうか。

質問2 氷河の流れる速さについて教えてください。一年でどれくらい流れますか。
 また、氷河の真ん中と、はじの方では流れる速さは違いますか。それとも同じですか。

質問3 日本には今、氷河はありますか。ないとしたら、昔はあったのですか。

質問4 温暖化で氷河がどんどん溶けていると知りました。氷河がこれ以上溶けないために、私たちには何ができますか。

 よろしくお願いします。
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(注:この質問は私宛にE-mailで届き、その回答もE-mailで送りましたが、質疑応答の内容は多くの人々の関心事であり有益な情報と考え、ご本人の了解を得て、このBBSに公開することにしました。成瀬廉二)

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No.1594     Re: 氷河の質問
 
                   成瀬廉二、2007/08/13(Mon)

 とても良い質問ですね。でも、本当はかなり難しい問題です。以下に簡単にお答えしますが、さらに疑問などありましたら、どうぞ遠慮なく質問してください。

[質問1]
 空気がたくさん入っている氷は白く、空気があまり入っていない氷は青く見えます。残念ながら、お父さんの答えの方が正しいようです。

 氷の中では、空気はたくさんの小さな粒(気泡)に閉じ込められています。氷にあたった光は、それらの気泡でさまざまな方向へ反射(乱反射)し、光は白くなります。ビールの泡、曇りガラス、ほこりをかぶったテーブルが白く見えるのと同じ理由です。

 一方、氷は光(可視光)に対しては透明なので、気泡の少ない氷では内部深くまで光は通ります。しかし氷は、赤っぽい光をわずかに吸収するので、光が氷の中を進むにつれ赤い光が減り、次第に青い光のみが残ります。したがって、汚れていない、空気があまり入っていない氷河では、氷河の内部から反射されてきた光を見ることになるので、青色になります。

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 (写真:南米パタゴニアのウプサラ氷河から崩れ落ち、湖に浮かんだ氷山。白い氷と青い氷が見られる。)

[質問2]
 氷河の流れる速さは、地域により、氷河によっても大きく違います。
 遅い氷河では1年に10メートル程度、速い氷河では1年に1キロメートルにもなります。
 氷河の流れは氷河の中央部で速く、岸に近いところは遅いです。川の流れと似ています。

[質問3] 
 日本には現在、氷河はありません。1万年以上前の氷期には、長野県、富山県、北海道の高い山の上には小さな氷河が数多くありました。

[質問4] 
 残念ながら、温暖化がこのまま続くと、スイス・アルプスの氷河はどんどん小さくなり、氷河によっては消えてなくなると予想されています。
 これを防ぐことは大変難しいことですが、私たちにできることは電気や石油、ガソリンを無駄に使わず、大気中の二酸化炭素を今以上に増やさないようにすることです。

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No.1596       ありがとうございました 

                     三上真穂、2007/08/14(Tue)

成瀬先生

分かりやすい答えを、さっそくありがとうございました。

先生のおかげで、本やホームページでは調べられなかった
氷河のことがずいぶん分かりました。

あと2つ質問があります。

雪が積もって氷河の氷になるまでにはどれくらいの年月が
かかりますか。

それから、このあいだシャモニーでハイキングしたときに、
ラック・ブランという白い湖がありました。上の方の氷河が
溶けた水が流れてきているようなのですが、どうして白く
見えるのですか。もっと下の方にある湖はとうめいでした。

スイスに来てからハイキングしたときにとった写真を何枚か
送らせてもらいます。

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 No.1597 Re: 氷河の質問  

                    成瀬廉二、2007/08/14(Tue)

 初めの質問も今回もですが、日本では小・中学校生がこういう問題に疑問をもつとはとても考えられません。さすが、氷河の豊富なスイスで暮らしているからですね。

[雪が積もってから氷になるまでの年月]
 氷河に積もった雪の表面が、夏の暑い日に少し融(と)け、その融け水が雪の中で凍る、ということを繰り返すと、1年で氷になることがあります。アルプスなどの山の氷河では、ふつうは10年から数十年で雪から氷に変わります。

 一方、南極や北極の寒い地域の氷河では、雪が融けることがなく、毎年降った雪が積み重なります。そうすると、下の雪は上の雪の重みでつぶされ、じょじょに固くなり、長い年月の後、氷に変わります。南極の氷河(氷床)では、氷になるまでに数百年から1千年ほどかかります。

[白い湖]
 氷河が岩の上をすべって流れるとき、非常に少しですが、岩をけずります。その岩のけずりくずが、融け水に混ざり、川となって流れます。送っていただいた湖の写真は、この非常に粒の小さい岩くずが水に混ざっているので、白くにごっています。これは、glacier milk(氷河ミルク)とも呼ばれます。

 このにごった水をナベに入れて静かにおくと、岩くずは沈み(沈殿)、水は透明に近くなります。ですから、下の方にある湖はとうめい、だったのでしょう。

 以上の答えが参考になったのなら嬉しく思います。また何か、質問や感想などありましたらどうぞお寄せ下さい。

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No.1599
八の沢カール  

                       金森晶作、2007/08/30(Thu)

北海道日高山脈,カムイエクウチカウシ山と,八の沢カールの写真です。先週末に行って来ました。

三上さんからの質問に関連する話題があったので紹介します。
1~2万年くらい前の氷期には,ここに氷河がありました。
山の中腹がスプーンでくりぬいた様に削られているのが氷河が流れた跡です。

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No.1601 シャモニーに行ってきました 

                       三上 真穂、2007/09/11(Tue)

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成瀬先生へ

 私は無事に氷河の自由研究を終わらせることができました。スイスでは、図書館で日本語の本を調べることができません。先生に教えていただいたおかげで、今まで知らなかった氷河のことがたくさんわかって、うれしかったです。

 今日(9日)はフランスのシャモニーに行って、メール・ド・グラスという氷河の近くまで下りてみました。近くで見ると、石や砂がいっぱいあって、青い氷があると思っていたのでびっくりしました。
 
 たくさん階段を下りて下の方に行くと、石や砂の下に氷があって、よく見ると空気の泡がたくさん入っていて、それは昔の空気なのかと思うと不思議な気持ちでした。でも、そこの氷河はとけていて、氷河のトンネルの中にあったちょうこくもとけていて、何のちょうこくなのかわかりませんでした。
 
 先生、いろいろありがとうございました。これからもホームページを時々見ています。

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No.1604     「航空写真測量」

                         西村大輔、2007/10/01(Mon)

北大低温研修士2年の西村です。
雪氷学会富山大会で航空写真測量に関する発表をし
成瀬先生に質問を頂きましたが、
満足な答えができませんでした。

あらためて説明したく書き込み致しました。

航空写真測量で氷河の表面流動速度を測定するには
異なる時期(例えば一年の間をおいて)
に撮影された氷河上のクレバスの移動距離を
測定します。

頂いたご質問を私なりにまとめますと

クレバスのような位置だけでなく、
形も変化し氷河上にたくさんあるものから
去年と同じクレバスを探せるのか。

という事であったと思います。
私の答えは

同じクレバスが探せるような期間で
写真を撮影しなければならない

というものでしたが、
加えて実際に測定する際には
単体のクレバスを探すのではなく
レンズで見る視野の中のクレバス群の
位置関係を全体的に一致させて探します。

適正な期間に移動したクレバス群であれば
個々のクレバスは変形し移動しても
全体的な位置関係やクレバス群がつくる模様は
大きく変化せず、明らかに一致させることのできる点が
多く存在していました。

まず、全体的な模様を一致させ、
それから自分の知りたい座標点を探しました。

以上です。
ご質問ありがとうございました。

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No.1605         Re: 航空写真測量 

                     成瀬廉二、2007/10/02(Tue)

 まず、この投稿に返信コメントする前に、一般の閲覧者にとっては何のことを話しているのかさっぱり分からないと思われますので、この話題の背景を簡単に説明いたします。

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 (図:ローヌ氷河Rhonegletscherの変動.上、1800年頃;中、1894年;下、1980年代.J. Oerlemansの厚意により"Glaciers and Climate Change"(2001)より転載)

 去る9/25-28に富山にて開催された雪氷学会の研究発表会にて、西村大輔・他が「スイスアルプス・ローヌ氷河における過去100年の表面流動速度変化」を発表しました。

 その研究手法は、ある年とその翌年の航空写真にて氷河上のクレバス(氷の割れ目)を標識にして氷の流動速度を求め、1874-1910年に氷河上の石の測量により得られていた流動速度と比較、議論したものです。

 さて西村君、補足の回答ありがとうございました。これで理解し、納得しました。

 私も、パタゴニアのペリ-ト・モレノ氷河で湖に流出している氷河の末端部分の流動速度を写真測量で測定できないかと、湖岸の定点から1日に2回写真を撮り続けたことがあります。

 しかし、この氷河の流動速度が速い(2-3 m/day程度)ことに加え、クレバスやセラック(氷塔)の変形や崩壊、融解が激しく、1日後でも「同じ点」と同定するのが難しいこともあり、3日後だと大半が不確かとなり、この観測の試みはあまり良い結果が得られませんでした。

 そういう経験があったので、「1年後に同じクレバスが分かるのか?」との疑問を抱いた次第です。

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No.1600    氷が融ける

                     成瀬廉二、2007/09/11(Tue)

 昨年、「地球の自然の歴史」関係の大学生向き教科書の一つの章「陸水の長周期変動―氷河の変動―」を執筆した。この夏に、その校正刷りが送られてきて、中を見てびっくりした。それは、「氷が融ける」の「融」がすべて「解」に変わっていたのである。
 これは、出版社の編集子が「誤字」を正してくれたものだった。直ちに私の意図、考えを伝え、もとの「融ける」に戻してもらった。

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 (写真:氷河の年間融解量測定用ポール;パタゴニア・ウプサラ氷河、ペリートモレノ氷河)

 このいきさつがあったので、雑誌「雪氷」2007年9月号に「雪は融けるのか、あるいは解けるのか?」へのコメントを投稿した。その要点は、以下のようなものである。

 現在の常用漢字表では「融」の訓読みがない。しかし、各種の国語辞典で「とける」を引くと、順序はいろいろだが、溶、融、解が示されている。常用漢字表は「使用のめやす」を示しているので、それ以外は使ってはいけないわけではない。溶、解の第1義は、現象が異なるので、雪や氷が「とける」のは「融」が最もふさわしい。

 新聞や学童向け書物では、解か溶が使われているが、専門書や一般書、インターネット等では遠慮なく「融ける」を使うべきである、というのが私の主張である。
(なお、拙著コメントをご覧になりたい方は、e-mail等にてご一報ください。PDF1枚をお送りいたします)

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No.1602   ふたたび、キリマンジャロの雪

                      成瀬廉二、2007/09/18(Tue)

 今日の日本海新聞や山陰中央新報にて、「消えゆく雪、森」の見出しで、キリマンジャロ山頂の雪の減少が写真入りで報じられた。(共同=田中寛)との署名付なので、全国の地方紙に掲載されたことだろう。

 記事の論調は、気候変動により、キリマンジャロ周辺の雨量が減り、その結果、万年雪が減少し、森林、農業にも大きな影響が現れている、というものである。

 山頂の雪に関しては、国連環境計画の関係者の以下のコメントを引用している。「雨量の低下で雲が減り、氷河への直射日光の量が増えて氷河が蒸発している。さらに、今も議論のあるところだが、温暖化がそれに拍車を掛けている」

 これはかなり理に適った指摘であり、本記事も「地球温暖化が原因」という単純な筋書きではなく、的確にまとめられている、と感じた。


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No.1606 北極の氷

成瀬廉二、2007/10/09(Tue)

 先日、地球環境問題に関心があるという北海道在住の一主婦から、以下のような質問をいただいた。その要点は、当NPOのHPには「将来予想される海面上昇量の約半分は山岳氷河と北極氷冠の融解による」とあるが、あるTV番組のHPで某教授が「北極の氷は水に浮いているので、全部とけても海面を上昇させない」と述べているが、どういうことですか、というものであった。

 これには、地理学と物理学の2種類の問題を含んでおり、たいへん興味深い。まず、北極点は面積1400万平方キロメートルの北極海の中央にある(偶然ながら、南極大陸の面積とほぼ同じ)。某教授が言う北極は、この北極海を指している。だから、「海の氷は浮いているので融けても水面の位置は変わらない」ということになる(アルキメデスの原理)。

 一方、北緯66度33分以北の地域を北極圏という。そこでは、1年の内1日以上太陽が沈まない日および昇らない日がある。北極圏には、カナダ北部の諸島、グリーンランドの半分以上、北欧北部の島々が含まれ、それらには数多くの氷河や氷帽(氷冠)が存在している。当方のHPに記載したことは、これらの北極氷帽の融解・消滅が海水面上昇に大きく寄与する、ということである。
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(図:矢吹裕伯「北極の永久凍土分布」より)

 さて、これに関連して2、3補足しておこう。米地質調査所(USGS)の報告http://www.usgs.gov/newsroom/article.asp?ID=1773
によると、50年後には北極海の海氷面積は42%減少し、海氷を生活の基盤としているホッキョクグマ(シロクマ)の生息数は2/3が減少するだろう、というものである。国際自然保護連合(IUCN)でも、絶滅の恐れがある、と警告している。

 この変動が激しい海氷は1年氷であり、冬に海水が凍って成長し、夏に融けて9、10月頃に海氷面積が最少になる。したがって、温暖な年には、冬に凍る氷の厚さが減り、夏に融ける厚さが増す、という温暖化の影響が二重に現れることになる。

 一方、北極海には、北極諸島の氷帽やグリーンランド氷床から流れ落ちた氷山や氷塊もたくさんある。これらの氷も、海に浮いているので、融けても海面変化には影響を与えない。しかし、氷帽や氷床から大氷塊が海に崩れ落ちた直後に、その氷塊の目方に相当する水の量だけ全世界の海水面を上昇させているのである。

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No.1611 今夏のグリーンランドの融解は過去最高?

成瀬廉二、2007/10/30(Tue)

「地球温暖化だー」と煽るつもりはないのですが、世界中の氷河や雪氷圏の研究者の多くが参加しているEメール網に、最近この話題が飛び交ったので、そのあらましを紹介しよう。

 最初の発言はベルギーの研究者(X. Fettweis)で、気候モデルによる計算の結果、2007年夏のグリーンランド氷床全体の融解量は1979年以来の最高記録であった、と報告した。

 これを受けてアメリカの研究者(M. Tedesco、他)は、人工衛星による観測でも同様な傾向が得られている、と応答した。マイクロ波による輝度温度の分布から、表面の雪が融けている地域と、融けていない地域とが判別できる。一夏を通して、日々の融けている地域の面積を足し合わせたインデックスを算出すると、グリーンランド氷床の標高2,000m以上では、2007年夏は1988年以来最も大きかったことが明らかとなった。

 いずれの研究も、2007年夏のグリーンランドの気温が平年に比べて著しく高かったことが主な原因である、と考えている。

 グリーンランド氷床上にはあちこちに観測基地や気象観測所があるので、点としては詳しい精密なデータが得られるが、広大なグリーンランドの全体の把握には気候モデルや人工衛星による研究や観測が有効となる。

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No.1603 極域に関するビデオ

Kenny、2007/09/28(Fri)

お喋りは英語ですが、映像だけでも楽しめます。結構良く出来ているように思います。
http://passporttoknowledge.com/polar-palooza/pp06.php
のwebサイトの下の方に行って、プルダウンで映像を選びます。リストの上のほうにあるアイスコア絡みのものを見ましたが、よく出来ていました。グリーンランドの映像です。





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