エベレスト氷雪崩、御嶽噴火、防災公園、ヘリ救助

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[Photo] エベレスト山(右奥の岩峰)とクンブ氷河. エベレストBCの下流、右岸モレーンから、1996年10月撮影(門田勤).
エベレスト山の氷雪崩 (1) 投稿日:2015/05/19、No.162
 去る4月25日正午頃、ネパール国内を震源とするM7.8の大地震が引き金となり、世界最高峰エベレスト山(8,848 m)で雪崩が発生し、国内の報道によると、ベースキャンプ(5,300 m)に滞在中の約1000人の登山者およびシェルパの内、日本人1人を含む少なくとも19人が死亡し、数十人が負傷した。

 雪崩事故現場は人里から遠い高山の中ながら、登山者や山岳ガイド等が各種SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を利用して現地の状況を発信したので、事故の翌日には「18人の遺体が収容され、61人が負傷。エベレストでの過去最悪の惨事となった」(ロイター通信)などと報じられた。

 一方、雪崩については、発生箇所、規模、性質などについてほとんど情報がない。しかし今回の山岳事故では、2、3年前は考えられなかったことだが、遭難者が雪崩に襲われる直前まで、あるいは雪崩に埋まっても撮りつづけていた動画が、何本かYouTubeに投稿された。

 その内の一つに、雪崩の発生からベースキャンプ(BC)に到達するまでの1分40秒間を撮影した動画があった。それによると、発生箇所は、クンブ(Khumbu)氷河のアイスフォール(氷河の急傾斜地帯:写真中央のクレバス域)の右岸の岩壁に張りついた懸垂(けんすい)氷河のようである。

 すなわち、その懸垂氷河の一部(多量の氷)がアイスフォール上に崩落して、粉々になった氷が雪や岩屑とともにクンブ氷河上を流れ下った氷雪崩(こおりなだれ)である、と考えられる。

   
   (2)                  投稿日:2015/05/22、No.163

 そのYouTube動画によると、雪崩の前面(フロント)の雪煙は、時間とともにどんどん背が高くなるように見える。実際、フロントは空気の抵抗を受けるので、後続の雪氷粒子の方が速度が大きく、その結果、先端部に粒子が密集し、煙型雪崩のフロントは縦に高く、横に拡がり、雪崩の塊はオタマジャクシのように頭が大きく、長い尾をもつ形態となる。

 「巨大な雪の壁がのしかかってきた」(AP通信、読売)との遭難者の証言はこれを物語っている。また「飛んできたがれきに当たった」(CNN)との談話から、この雪崩は雪粒と氷片のみではなく、落石や岩屑を巻き込んでいたことが想像される。

 雪崩発生点の正確な位置は不明だが、ベースキャンプ(BC)から2 kmないし4 km上流だと仮定すると、雪崩フロントの平均速度は2km/100s(=20 m/s)=時速70 kmから4km/100s(=40 m/s)=時速140 kmとなる。この速度は、乾雪表層雪崩の標準的な速度の範囲にある。

 また、BCに数多く設営されていたテントのすべてが被害にあったわけではない。吹き飛ばされたり、流されたテントや人は全体の一部である。したがって、BC付近はこの雪崩の減速、停止位置付近だったと考えられる。

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 [写真]クンブ氷河のアイスフォール(写真中央の凹凸が激しい地帯).氷河調査隊のテント地(エベレストBC)から、1999年5月撮影(内藤望).
    (写真中央の黒矩形は、パノラマ写真を自動合成した際の隙間)

 
     (3)               投稿日:2015/05/25、No.164

 登山のベースキャンプ(BC)は、一般に休養、高度馴化、天気待ちのために長期間滞在するので、平坦地で水が得られることの他に、落石や雪崩に対して安全な場所が選ばれているはずである。

 しかし、今回はBCまで雪崩が到達した。かつてそういうことがあったかどうかは分からないが、少なくともBCで多数の雪崩死者は記録にない。

 今回の氷雪崩の発生場所は、添付の写真中央のアイスフォール上部の左(右岸)の岩壁の中ほど辺りと思われる。標高は7000 m付近との情報もある(AP、読売)。

 その雪崩のきっかけとなった懸垂氷河は、急斜面ゆえ、常に少しずつ流れ下っている。そして、力の均衡が崩れると、氷体の一部が周囲の雪とともに崩落する。

 頻繁に崩壊する氷河なら、それによる氷雪崩も小規模だが、懸垂氷河によっては数年~十数年に一度大きく崩壊する。そのような場合は、大規模な氷雪崩を引き起こすことになる。

 昨(2014)年も4月18日に、アイスフォール上部の右岸の岩壁から雪崩が発生し、荷上げおよびルート整備中だったネパール人シェルパ(ガイド)16人が死亡した。

 この遭難事故の後、雪崩や落石を避けるため、登山ルートは右岸寄りではなく、アイスフォール中央付近に変更されたそうである。アイスフォール地帯は、クレバス(割れ目)や氷塔が多く、通行は困難を極めるが、いつ襲われるか分からない雪崩よりは対処しやすいからであろう。

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   [写真]クンブ氷河アイスフォール直下にて微気象およびアイスレーダ観測(1999年5月、内藤望撮影).


        (4)              投稿日:2015/05/28、 No.167

 エベレスト雪崩事故に関する一連の報道で、アイスフォール地帯の登山ルートに設置されていたハシゴや固定ロープが雪崩のために破壊され、上部のキャンプ1(C1:5970 m)、キャンプ2(C2:6553 m)に滞在中あるいは登山行動中の多数の登山者が下山できず孤立している、と伝えられた(Quartzほか)。

 BCから発信した登山者のツイッター(26日)をもとに、「取り残された登山者のためにヘリコプターでロープなどの装備が届けられ、数人が搬送されたが、まだ100人以上が取り残されていると見られる。全員をヘリで運ぶことは現実的に不可能、あまりに人数が多過ぎる」と報じられた(CNN、4.27)。

 一体どうなるのか、どうなったのか、大変気になっていた。その後の経過は、イギリスの大手紙The Guardianの電子版(4.28)によると概要は次のとおりである。

 C1とC2に取り残されていた140人の登山者は、3機のヘリコプターにより救出活動が行われたが、空気が薄いため1フライトに2人ずつのシャトルの結果、28日までに全員が無事救出された。

 ヘリコプターが安全に飛行できる高度は、富士山頂上くらいまでだろうと思っていた。しかし、C2までは天候が良ければ支障なく飛行できるそうである。なお、国際標準大気では、気圧が地上の半分になる高度は5500 m、空気の密度が地上の半分になる高度は6670 mである(航空宇宙工学便覧より)。C2は後者に近い。

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 [写真]エベレスト山(中央奥の岩峰)とクンブ氷河アイスフォール(BC付近から、1999年5月、竹内由香里撮影).急峻な岩壁には、雪崩、氷雪崩の破断面がたくさん見られる.


         (5)            投稿日:2015/05/31、No.168

 ネパールの地震発生は4月25日11:56(現地時間)である。雪崩発生の正確な時刻は不明だが、BCにいた登山者の「昼食前にテントに入り、横になって休んでいると、激しい横揺れに襲われた。その直後、ドン、ゴーという雪崩特有のごう音が聞こえた」(毎日、4.30)等の談話が複数あるので、このエベレストの氷雪崩は地震により引き起こされたことはほぼ確実である。

 では、同じく地震多発国の日本では、積雪期に地震が起これば雪崩が発生しているだろうか。東北地方太平洋沖地震が起こった2011年3月11日は、東日本の山岳地はどこにでも十分な雪があった。

 3月11日朝、白馬村の北アルプス小日向山(1908 m)に山スキーに行った男性3人が雪崩に遭遇し、いずれも死亡した。この事故に関し、報道各紙は「東日本大震災の揺れで起きた雪崩に巻き込まれた可能性もあるという」「地震と雪崩との関係が指摘されていた」などと報じた。

 しかしながら、雪崩現場を調査したNPO法人日本雪崩ネットワーク(出川あずさ代表)は、「人的誘発あるいは地震が関係しているかは不明」という見解である。一般に、雪の層や質を調べても、雪崩との関連は分かり様がない。キーは、雪崩発生の正確な時刻であろう。

 一方、2013年2月25日、栃木県日光市で震度5強の地震があり、直後、奥鬼怒温泉の道路際で雪崩が多発した。調査を実施した雪氷防災研究センター(上石勲センター長)は、「日光市を震源とするM6.3の地震により各所で大規模な表層雪崩が誘発された」と結論づけた。

 雪崩の発生メカニズムについては未解明なことも多いが、少なくとも、斜面上の積雪や氷河が、雪崩や氷雪崩が発生しそうな程度に不安定な状態になっていたとき、地震による揺れが引き金となって雪崩が起こることもある、ということは言える。

 
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 [写真]エベレスト(中央)とヌプツェ(右).BCの下流の右岸モレーンから(1999年5月、内藤望撮影).

                      (完)

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『御嶽山噴火』             投稿日:2014/10/02、No.112

 木曽の御嶽山が噴火した翌日(9月28日)、空路にて鳥取から東京へ向かった。予約していた座席は左窓側だったので、中部山岳域はところどころ雲があったが、遠くまで比較的よく見えた。火山の大噴火なら、噴煙は一般に数千mの高さに達するので、必ず視界に入るはずだと窓から凝視していた。

 だが、それらしい噴火中の山が見えない。すると愛知県付近にて、遠くの山の頂上から厚い雲が風下側に流れているのに気がついた。しかし、雲の背が低いので山に掛かる笠雲の一種だろうと見過ごし、うかつにも写真を撮らなかった。後で読んだ新聞各紙によると、噴火翌日の噴煙の高さは山頂から300 m程度だったので、機中から見えた山はほぼ御嶽山に間違いない。

 というわけで御嶽山の写真がないので、その代役として、復路(29日)に見た山梨県側の富士山を示す。右隅に見えるのは富士五湖最西端の本栖湖。
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 御嶽山(標高3067 m:御岳山とも表記)は、この富士山に次ぐ2番目に高い火山である。深田久弥の「日本百名山」に含まれており、山小屋も多くあり、ロープウェイや車で7合目(2150 m)付近まで上がることができるので、登山者は多い。

 ところで、地震の予知は現状ではほとんど不可能だが、火山の噴火はある程度は予測ができるようになったと思っていた。住民や観光客の避難が完璧に行われ犠牲者ゼロだった、1986年伊豆大島噴火や2000年有珠山噴火の例があったからである。

 しかし今年の御嶽山では、9月10日~11日に火山性地震が一時的に増加し、14日以降は低周波地震が時おり発生したが、次第に減少し静穏に戻った。その後、火山性微動が発生したのは噴火の11分前、傾斜計により山側の隆起を観測したのは噴火の7分前、というまさに”直前”であった。(気象庁火山噴火予知連絡会見解より)

 特に今回の噴火は、紅葉のはしりの頃の晴天の土曜日の正午前に起こり、登山者が多く山頂付近で休憩、展望したり、弁当を食べていた時間帯であった。そのため、死者48人(2日現在)の(ほぼ)全員が登山者という過去に例がない大きな火山災害、山岳事故となってしまった。

 気象庁の「噴火警戒レベル」の発表基準を改定し、このたびのケースは、レベル1(平常)ではなく、レベル2(火口周辺規制)またはレベル3(入山規制)に上げるべきだとは思わないが、多くの人の目に触れる場所に「火山活動情報」を公表することが望ましい。それを見た人は、どうしたら良いか悩むことになるが、山に登ろうとする者は自分の責任において判断しなければならない。

『御嶽山噴火(続)』
                           投稿日:2014/10/14、No.114

 一時はスーパー台風とも言われた19号が日本へ向かっている頃(10月11日)、鳥取-東京便から、噴煙を上げている御嶽山をしっかり見ることができた。京都・滋賀あたりまでは雲の上、岐阜・愛知付近からは雲がなくなり北アルプスの山々も見えたのだが、全面にもや(靄)がかかり、コントラストが鮮やかではなかった(写真)。
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 この日も山頂付近で犠牲者1名が発見され、死者は計56人になった。この戦後最大の火山災害を受けて政府は、火山各所に噴石シェルター(退避壕)を整備する検討を始めたようだ。噴火は予測できないので、それならば防護施設を、ということだろう。

 火山噴火予知連絡会が、近い将来噴火の可能性があり、観測体制の充実の必要があるとして選定した47火山(下欄参照)のうち、阿蘇山、浅間山、草津白根山など約10火山にシェルターが設置されている。しかし、頑丈なシェルターは、一時的に噴石から身を守るためには有効かもしれないが、火砕流、溶岩流、有毒ガスにはまったく役立たない。

 登山者のための避難小屋(refuge)に比べ、多人数収容の立派なシェルターは桁違いに建設費用がかかる。また、暴風雨雪からの避難の場合は3、4日も待てば止むか晴れるが、火山の場合、何日、何か月続くか、今後さらに激しくなるのか分からないため、シェルターに一時避難してもその後の行動判断が非常に難しい。

 このようなハード対策ではなく、適切な「火山活動情報」をさまざまなメディアや場所に公表することは今すぐにでもできることである。活動的な火山(47火山など)を登ろうとする人たちは、天気予報を見るのと同様に、火山情報にも注視するようにすべきである。そして、多少でも危険を感じたら別の山に変更すればよいし、予定通りその火山に登りたい場合は、火口には近づかない、頂上付近には長居しない、速やかに下山できるルートを常に頭に入れておく、など種々の被害軽減策を講ずることができる。

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参考]47火山の内わけ(気象庁による).

①近年、噴火活動を繰り返している:
 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ヶ岳、秋田焼山、秋田駒ヶ岳、吾妻山、那須岳、草津白根山、浅間山、新潟焼山、焼岳、御嶽山、伊豆大島、三宅島、硫黄島、阿蘇山、霧島山、桜島、薩摩硫黄島、口永良部島、諏訪之瀬島 (23火山)

②過去100年程度以内に火山活動の高まりが認められている:
 アトサヌプリ、大雪山、恵山、岩手山、栗駒山、蔵王山、安達太良山、磐梯山、日光白根山、乗鞍岳、白山、箱根山、伊豆東部火山群、新島、神津島、八丈島、鶴見岳・伽藍岳、九重山 (18火山)

③現在異常はみられないが、噴火の可能性が考えられる:
 岩木山、鳥海山、富士山、雲仙岳 (4火山)

④突発的な小噴火により火口付近で被害が生じる可能性が考えられる:
 倶多楽、青ヶ島 (2火山)

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『兵庫県立防災公園』            
                           投稿日:2015/06/11、No.170

 播磨・三木市の兵庫県立三木総合防災公園にて開かれたスポーツイベントに参加した(6月7日)。名前が防災公園なので、何か特別な設備などがある場所かと思っていたが、陸上競技、野球、サッカー、テニス、グラウンドゴルフ等、さまざまなスポーツ施設と、自然体験の広場と森林ゾーンを有する広域公園であった。

 この公園の全面積は202 haであり、大阪城公園106 ha、皇居142 haと比べると、いかに大きいかが分かる。

 スポーツと自然散策のために利用されるのは、平常時の姿である。一方、災害時には、兵庫県全体の広域防災拠点としての役割を担うよう計画されている。例えば、野球場とサブ競技場は臨時へリポートおよび物資の集積・仕分け、陸上競技場は備蓄倉庫、その他の球技場と芝生広場は救援活動要員の集結・宿泊などに利用される。

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 写真は、同公園の一角にある兵庫県広域防災センター・消防学校であり、右側の高層建物の一面には救助活動の訓練用と思われるフリークライミング壁が見られた。

 このような救援活動の拠点としての防災公園は、東京都では日比谷公園(16 ha)など18か所(東京都公園協会)、大阪府では服部緑地(126 ha)など6公園、そのほか全国の市区町村により数多く整備されている。

 災害と言えば従来は地震と火災が主に考えられていたが、最近はこれに加えて津波、都市型水害、地盤液状化、交通マヒなどが懸念され、都市の防災計画は次々に見直しが迫られている。

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『登山者のヘリ救助(前)』
投稿日:2015/08/19、No.187

 去る8月2日15:40頃、鳥取市街の背後にそびえる久松山(263 m)の上空をヘリコプターが旋回を始めた。同時に、救急車と消防車が、久松山の登山口手前に集結した。

 2、3分後、ヘリコプターは頂上のやや横の上空で停止(ホバリング)し、そこからホイストケーブルにより1人が降下し、山の上に降りた。その後、ヘリコプターは山から離れ、視界から消え、音もしなくなった。

 それから約20分後の16:10頃、再びヘリコプターが現れ、先ほどと同一地点で停止し、ホイストケーブルにより1人が降りて、2人が抱き合うように引き上げられ(写真)、ヘリコプターに収容された。もう一度、ケーブルを下ろし、最初に降下した1人を引き上げ、ヘリコプターは速度を上げて飛び去った。
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 この出来事は、少なからぬ人に目撃されたので、何があったのかくらい、新聞のローカル面に小さくでも載せるべきだと思ったが、新聞、インターネットではこれに関する記事、ニュースは見当たらなかった。

 このヘリコプター(写真)は、白と赤のボディに鳥取の県章(青い“とり”マーク)が付いており、鳥取県の消防防災ヘリコプター(Bell)である。これは、市町村長または消防局長からの要請があったとき運航される。

 以上から判断すると、久松山の頂上付近で、登山者の一人が怪我か体調不良になり、その人または同行者が消防署に救助を依頼し、それを受けて消防局が消防防災航空センターに要請したのだろう。

 当日(2日)鳥取市では14:30頃、35.6℃の猛暑を記録した。久松山はかなりの急斜面にジグザグな登山道が整備されており、標準的には登り40分程度だが、楽なハイキングと言うわけには行かない。登山中に転倒負傷とか熱中症とかがあり得ないわけではない。ヘリコプターで救助するほどのことかは別として。


   (後)           投稿日:2015/08/23、No.188

 鳥取県(東部広域)消防局の「救急車による傷病程度別搬送人員」の資料によると、県東部地域にて本年1~7月に救急車により搬送された人の総数は5282人で、そのうち死亡または重症(3週間以上の入院を要するもの)は641人(12%)、中等症(入院を要するが重症に至らないもの)2557人(48%)、軽症(入院を要しない)は2079人(39%)となっている。すなわち、出動した救急車の半数近く(以上)は、緊急性がないことを示唆している。

 一方、鳥取県消防防災航空隊は、防災ヘリコプターの運航実績をインターネットでも公開している。それによると、運航目的は通常運航(行政、防災、訓練、ほか)と災害活動(火災、救急搬送、捜索・救助)に分けられ、後者が半数弱である。

 2012-14年の3年間合計の災害活動運航件数は332件に達し、各事例について、日、場所、運行時間に加え、30~50字程度の簡単な活動レポートが付記されており、かなり興味をそそられる。

 332件の内、山岳地(里山を含む)が99件で、当然ながら大山(だいせん)が圧倒的に多い。特に、積雪期の大山は、急峻な氷雪斜面と細い稜線は厳しく、地上からの救助隊にも困難がともなうので、防災ヘリコプターは非常に有効である。

 一方、スキー場(氷ノ山、大山など)も3年間に26件あることに驚く。これはほとんど全て、スキー場の駐車場から病院までの搬送である。つまり、救急車の代用である。当事者またはスキー場スタッフから消防局へ依頼があり、それがヘリコプター要請になったのではないかと想像する。「スノーボードで転倒、背部打撲。本人が搬送を拒否し、要請キャンセル」というレポートもあった。

 被救助者の症状には、「転倒負傷」と漠然とした記載も多いが、打撲、捻挫、くじき、骨折(の疑い)、脱臼、出血、熱中症、体調不良、歩行困難、動けず、疲労、道迷い、等々、多彩である。

 応急手当の後ゆっくりと、あるいは仲間にサポートされれば、自力で下山できるケースも多いのではないかと思うが、それは推測に過ぎない。また、ヘリコプターで搬送するほど生死に関わる事例がどのくらいあったかどうかは、ここでは分からない。

 救急車を有料にすべし、と主張する識者もいる。基本的にはその意見に賛成だが、どんな状況でも、誰からも一律に徴収、とすることには問題がある。一方、登山などのリクリエーションに関わる救助ヘリコプターは、当事者が費用の一部を負担するようにしたらどうかと思う。携帯電話で安易に119番を呼ぶことが少なくなるだろう。

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[写真]:大山剣ヶ峰(1729 m)と北壁(行者谷より、2010.8.30)。
 夏山の頂上、弥山(みせん、1709 m)は写真の右枠外。剣ヶ峰~弥山は、岩石の崩落が激しく、現在は立入禁止となっている。



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